カレンダー

2023/07
      
     

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

物理演算エラー

by 唐草 [2023/07/22]



 安全性を巡って世間を騒がせたティルトローター機のオスプレイ。最近ではニュースでその名前を見ることもない。
 ほとぼりの冷めた感のあるオスプレイだが、多摩地区では飛んでいる姿を見るのは珍しくない。横田基地所属の機体が、頻繁に飛び回っている。特徴的な機影は、見慣れたと言えども目を引くものがある。とはいえ、飛行しているオスプレイを間近で見たことはなかった。
 先日、横田基地の近くに行ったら手が届きそうなほどの高度でオスプレイが飛び回っていた。タッチ&ゴーみたいなことをしているようだった。「みたい」と書いたのは、オスプレイの動きのせいだ。
 一般的なタッチ&ゴーは、滑走路へ着陸態勢で飛んできて、一瞬だけ車輪を地面につけるとすぐに再加速して離陸する。
 オスプレイは違った。ヘリコプターのように垂直な離陸と着陸を繰り返していた。しかも、ただ上下に動いていたのではない。
 ぼくは4階相当の高いところから目を輝かせながらオスプレイの姿を食い入るように見つめていた。目を奪われたのは機体を間近に見られるからだけではない。想像を遥かに超えたオスプレイの奇妙な動きに釘付けになっていたのだ。
 それは曲芸飛行なんてレベルではない。飛行機に対する常識が根底から破壊されるような動きだった。
 25mぐらい上昇したオスプレイはしばらくホバリングすると、ゆっくりと前進しながら水平方向に360度回転した。言うなれば、飛行機のドーナツターンだ。ヘリコプターならいざしらず、飛行機でそんな芸当ができるなんて想像もしていなかった。
 だが、それは序の口でしかなかった。
 今度は、先程とは逆向きに回り始めた。なんと機体は旋回しながらバックしたのだ。まるで先程のドーナツターンを逆再生で見ているようだった。
 飛行機のくせに空でバックできるのかよ…。そんな言葉が口から漏れていた。
 目の前で繰り返される光景は、にわかには信じられないことの連続だった。できの悪いゲームで物理演算が破綻したときのようにさえ見える。いっそバグだと言われたほうが納得できるレベル。
 これがオスプレイの実力なのか!