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1℃を巡る攻防

by 唐草 [2023/07/12]



 昼間は35℃を超える猛暑日で、夜になっても25℃を下回らない熱帯夜という良くも悪くも夏本番らしい日が続いている。
 数年前から夏本番という言葉への印象が変わってきている。以前は、降り注ぐ日差しに対してもっとポジティブな印象があった。それは遠い夏休みの記憶を呼び戻すだけではなく、開放感あふれる季節を歓迎する気分に満ちていた。
 最近は開放感よりも熱波に伴う身の危険を感じるようになっている。息苦しいほどの暑さに身を置くとき、熱中症はコロナよりもずっと身近な恐怖だ。
 だから、最近は昼間の行動を極力避けている。カーテンを締め切ってた部屋で冷房をつけて暑さが去るのを待つだけ。しかし、日が落ちても熱波は街を包み込んでおり冷房の効いた部屋から出られない。
 夏本番のぼくは、夏好きを公言しているにも関わらず霊安室の遺体とそう変わらぬ静かな毎日を送っている。
 1つだけ霊安室と違うことがあるとすれば、日夜1℃を巡る攻防が繰り広げられていることだろう。
 ぼくはエアコンを自動設定で稼働させている。だから、エアコンが何度を目標に稼働しているか把握していない。実際のところ利用者が設定温度を理解している必要なんてない。重要なのは、体感で暑いか寒いかを判断することだ。
 標準設定で自動運転させるとぼくには少し暑い。外よりずっと涼しいが、少しむっとした空気を感じる。
 そこで、設定温度を1℃下げる。
 するとエアコンは俄然やる気を出したように冷たい風を吹き出す。エアコンが本領発揮できる機会を喜んでいるかのようにさえ見える。
 10分もすれば部屋は、これぞ冷房が効いた部屋という感じに冷える。だが、ぼくには少し寒い。気がつくと足先が冷えないように椅子の上であぐらをかいている。
 設定温度を元に戻す。
 エアコンはすぐに静かになり。気温も徐々に上がっていく。あぐらも解いてリラックスした姿勢に戻っている。だが、少し暑い。
 再び温度を下げる。そして15分ぐらいたったら元に戻すということを延々と繰り返している。リモコンの温度ボタンの刻印がすり減る日も近いだろう。