by 唐草 [2023/08/26]
ぼくは寝るときにパジャマを着る。季節に合わせたパジャマを何組も持っている。夏場は毎日洗濯したいので、夏物だけで4組もある。
4着の夏用パジャマにこだわりはない。古いものが駄目になるたびに新しいものを買い足しているだけなので、生地も仕立ても様々。どれも下はゆったりした半ズボンだが、上はTシャツのようなものもあれば、ポロシャツのようなものもある。
今着回している4組の夏用パジャマの中で、1つだけ失敗したなと感じているものがある。それがグレーのポロシャツみたいなもの。
そのパジャマは伸縮性のあるゆったりした素材で着心地は軽やかで夏向け。まるで服を着ていないかのようである。布の材質だけなら持っているものの中で一番気に入っている。
しかし、襟の裏についているサイズを示す小さなタグが曲者だ。ちょっと硬い布で作られているせいでタグの角が首筋をチクチクと刺激する。仰向けになって寝転がっていると不意に首を小さなもので刺されたような違和感が走る。痛くはないが思いがけぬタイミングでの刺激に驚いてしまう。起きているときなら気にならない些細なことでも、寝しなだと妙に気になってしまう。それが小さな小さなストレスだった。
ぼくは幼い頃から服のタグが体にぶつかるのが苦手だった。耐えられずにタグを切ってしまったことさえある。だが、切ったのは人生最大の失敗だった。切って短くなったタグはより強固にぼくの首を刺激した。断面がギザギザだったのも事態を悪化させていたのだろう。
そんな苦い経験があるので、タグのことは意識的に無視するようにしてきた。
だが、このパジャマのタグだけはどうしても我慢できない。だからと言って切ったら幼き日の二の舞いになるのは明らかだ。
どうすればいい?
ぼくは大胆な方法を選んだ。
パジャマを裏表逆に着ることにした。こうすればタグは外側だ。
このシンプルだが大胆な方法は完璧に作用した。もう何物もぼくの首を刺激することはなくなった。
他の服でも同じことができたら嬉しいのだが、裏返しで着るなんて方法は誰にも見られないパジャマだからできる限定的な裏技だ。