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土のその後

by 唐草 [2023/08/20]



 高校野球を象徴する行為の1つに敗者による甲子園の土の回収がある。以前、テレビで土を持ち帰るようになった歴史を紹介していたが、その経緯をまったく覚えていない。きっと球児の心を理解していないぼくには響かなかったのだろう。
 それよりも土を集める球児たちをグラウンドで腹ばいになって撮影するカメラマンの姿にドン引きしたのを覚えている。
 体を張った撮影はカメラマンの腕の見せ所だ。でも、甲子園のグラウンドに這いつくばるカメラマンの姿には球児への敬意を感じられなかった。姿勢とは裏腹に「さぁ、オレが散り際を美しく撮ってやるから土をかき集めろ、ガキども」という上から目線を感じた。
 もしカメラマンが構えていなかったら敗者は土を集めるのだろうか?そんな疑問さえ覚えた。
 伝統は得てして本来の意味を失い形骸化していたりする。長く続くお祭を目にしたとき、古風な衣装や世代を超えた伝承に伝統を感じる。でも、そのお祭がなんのために開催されるようになったかなんて全然知らないし、気にも留めない。
 それと同じように土集めも最初に行った球児の想いは失われており、そういうものなんだという思い込みで繰り返されているだけかもしれない。きっと来年の球児も先輩がそうしていたからという理由で土を持ち帰るのだろう。
 そうして毎年夏らしい画が作られていく。
 ぼくの通っていた高校は予選を突破するような強豪校ではなかったので、身の回りに甲子園の土を持ち帰ったことのある人はいない。
 だから気になっていることがある。
 持って帰った土は、その後どうなっているのだろう?
 記念品として瓶詰めのままトロフィーとして未来永劫取っておくのだろうか?
 甲子園を管理する阪神園芸はこの土を売っている。今は数百キロ単位での販売だそうだ。この売り方からすると記念品ではなく大規模園芸用だろう。
 甲子園の土が園芸に適しているのなら、瓶から出してガーデニングに使うのがいいのだろう。球児の汗と涙が染み込んだ土は、文学的にはきれいな花を咲かせそうだ。実際は白線の石灰と汗の塩分が過剰で園芸には向いていなさそうだけど。