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パワード登山

by 唐草 [2023/08/18]



 モーターと外骨格で人間をサポートするパワードスーツの研究開発が進み、倉庫や介護の現場に試験導入されている。ある記事では、2人必要だった力仕事を1人でできたという成功談があった。さまざまな面で期待の持てる内容だった。
 しかし、実用化にはまだ遠い。まずはコスト。パワードスーツ導入と運用のコストが、人を雇うより高いようだ。これでは多くの経営者の心には響かず導入は期待できない。
 使用者側にも問題がある。バッテリー持続時間が短いことが挙げられていた。いくらパワーが2倍以上になったとしても、1時間しか持続できなければ仕事にならない。運用時間が短くても許されるのは、敵を瞬殺できるヒーローだけだ。
 パワードスーツが実用化されるには、低コスト化と長時間バッテリー稼働できるようになることが必要。例えば山小屋に荷物を運ぶボッカが往復で使える性能だ。それを実現するには、バッテリーの革新が必要になる。革新が起きるのは明日かもしれないし、10年経ってもまだかもしれない。パワードスーツを身に着けた人が街中を闊歩する日はまだまだ先になりそう。
 とは言え、パワードスーツが実用化されれば世界は大きく変わるに違いない。ドローンやスマホ以上のインパクトが期待できる。きっと仕事だけでなく遊びも変わる。
 ボッカの話題が上ったので、このまま山でのパワードスーツ使用を考えたい。山岳救助隊では大活躍するだろうし、一般登山客もスイスイと山に登れるようになる。
 しかし、同時にパワードスーツの不適切使用で迷惑をかける登山客も現れるだろう。爆速で登って一般登山者を危険に晒す人、途中でバッテリーが喪失して動けなくなる人、壊れたパワードスーツを山に放置する人などなど。
 新技術が正負の両面をもたらすのは歴史が証明している。
 賛否入り交じる状況になったとき、古くからの登山経験者はパワードスーツを利用した登山は登山ではないと精神的な話を始めるだろう。それは、今の自転車乗りが電動アシスト自転車を快く思っていないのと同じ。
 実用性ではなく精神性が語られるようになったら、たぶんそれは本当に普及した証。