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空っぽのスケジュール

by 唐草 [2023/08/13]



 ぼくのスケジュールはいつでも空っぽ。カレンダーにあるのは、自動的に登録される日本の祝日とこのサイトのSSL証明証の更新日、そして散発的に入る仕事の予定があるだけ。定期的な仕事はないし、遊びの予定もない。8月に至っては山の日しか書かれていない。
 唯一の予定である山の日が終わった今、カレンダーには表示するべき直近の予定がひとつもない。人によっては、何もない空虚さに不安を感じるかもしれない。
 ぼくは、仕事にも急かされず、面倒な付き合いもないこういうエアポケットのような期間が大好きだ。それはしがらみから解き放たれた開放感といって差し支えない。
 だが、そんな生活をGoogleカレンダーは良しとしない。
 スマホのホーム画面に置いたカレンダーは、ありのままの空白を表示するのではなく、新たな予定の追加方法を表示している。今すぐ、ここをタップして予定を埋めろと迫ってくる。
 確かにカレンダーアプリにとって表示するべき予定がないというのは、沽券に関わる由々しき事態だ。
 Googleの忙しいであろう敏腕開発者からすれば、2週間も空白が続くなんてことは想定外だろう。その様子からぼくをアプリの使い方を理解していない初心者ユーザと判断して新規予定追加のヒントを表示するのも致し方ない。
 ぼくは彼らと同じITエンジニアかもしれないが、人間の根幹の部分は180°異なる。花形IT企業で働く彼らと比べたら、ぼくなんて彼らが照らす世界の影に暮らす人間だ。それはなにも暗く寂しい世界に生きているということではない。根本的に価値観の異なる世界で生きているということ。
 ぼくからすると予定を埋めろと迫ってくる彼らは「予定は埋めるべきで、埋まらない日は無為な日である」という強迫観念に駆られているようにしか見えない。絵を描く時に余白があるのを我慢できずに何かで埋めようとする人に似ている。昔の海図にクラーケンがいるのと同じ。
 そんな生き方、ぼくは嫌だ。予定を埋めろと迫ってくるGoogleカレンダーに息苦しさしか感じない。ひとまず、月末にダミーの予定を入れてお互いの平穏を手に入れるとしよう。