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人をダメにするヤツ

by 唐草 [2020/04/09]



 先月末に無印良品の『体にフィットするソファー』を購入した。正式名称だとピンとこない方も多いだろう。ネットでの通称である「人をダメにするクッション」と呼んだほうが通りは良いかもしれない。直径1mぐらいある大きなビーズクッションだ。
 スライムのように自在に形を変えるビーズクッションが体を優しく包み込んでくれるらしい。その包容力は一度知ってしまうと抜け出せないと噂されている。腰を下ろしたが最後、もう二度と立ち上がりたくなくなることから「人をダメにするクッション」と呼ばれているそうだ。
 本当に魔性とも呼ぶべき包容力に溢れているのだろうか?長らく日本人をたぶらかしてきたコタツに取って代わる存在なのだろうか?半信半疑であったが、今より少しでもダラダラした毎日を過ごしたい一心で購入に踏み切った。
 クッションを初めて見た感想は「思ったよりずっとデカイ」の一言だった。ネットで話題になった数年前に店舗へ下見に行ったことがあった。だからサイズ感は十分把握しているつもりだった。広い店舗で見ると大きく見えるということを勘案していたにもかかわらず、ぼくのサイズの見込みは大間違いだった。座った感じも店頭に置かれたサンプルとは、まったく異なっていた。ぼくが試した品よりずっとハリがあった。どうやらぼくが試したサンプルは、大勢に使われくたびれていたようだ。
 この誤算は、嬉しい誤算であった。記憶の中のクッションよりずっと座りやすかった。腰を下ろし始めたときはビーズが動いて頼りないのだが、そのままどかっと体をあずけるとカバーの中で行き場を失ったビーズがぐっと体を支えてくれる。この動きのせいで初めは恐る恐る座っていた。でも、それだとフィット感はいまいち。ソファーを信じて体を投げ出せるようになったからが本番だった。体にフィットするという言葉には偽りがなかったし、未体験のフィット感があった。
 もう、ぼくもこの包容感から抜け出せそうにない。
 それは我が家の猫も同じようだ。ヤツらは、人が乗っていないとすぐにクッションを我が物顔で専有する。可愛い光景かもしれないが、猫爪の危険性を考えると油断はできない。
 人をダメにするクッションは、猫もダメにするクッションだった。でも、遠くない将来「猫にダメにされるクッション」にならないかと早くも心配が尽きないのである。