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Lv99のジグソーパズル

by 唐草 [2020/04/10]



 ジグソーパズルのピースがピタリとハマったときの気持ちよさがキライな人はいないだろう。
 昨日と今日ぼくが取り組んだ作業は、ジグソーパズルに似ていた。それも超高難度で、やり直しの効かない一発勝負のパズルだった。
 それが、本のカバーの修復である。
 昨日、うちの猫が本棚で爪とぎをしてしまった。並んでいた3冊のマンガが、カバーの背表紙部分を引き裂かれるという大ダメージを受けた。猫爪にかかればマンガのカバーも障子紙も同じ。どの背表紙も廃墟の破れ障子のようなありさまとなっていた。
 無残な姿に変わり果てたマンガ本をこのまま放置したら、残った部分も壊れていくだろう。必要なのは早急な処置である。幸運なことにぼくは紙の修復の基礎を知っているし、我が家には道具も揃っている。
 床に散らばったたくさんの残骸を1つ残さず集めると、本の修復に取り掛かった。
 まずは、残ったカバーの裏に和紙を貼り付けて土台を作る。接着に用いるのは水で薄めたヤマトのり。カバーの破れやシワを丁寧に伸ばしながら和紙を貼り付ければ準備は出来上がり。ここから先は技術よりも根気と集中力が求められる。
 散り散りになった紙の小片をジグソーパズルのように地道に張り合わせていくのだ。ただし、決定的にジグソーパズルとは異なる3点がある。
1.ピースの形が不揃いで、極小。
2.すべてのピースを埋めても隙間がなくなるとは限らない。
3.同じデザインの1巻から3巻が破られたので、どの本のピースか分からない。
 パズルマニアでもない限り匙を投げそうな難しさだ。でも、ぼくは諦めずに立ち向かった。
 ピースをピンセットを使ってで、それっぽい場所に置いて形を合わせてみる。印刷が噛み合う場所は簡単だが、無地のところは手強い。向きがわからないので小片を様々な角度に回転させて噛み合わせを確認していく。貼り直しはできないので慎重さが必要だ。
 ここしか無いという場所が定まったら、小片にノリを塗って和紙の上に置く。仕上げに水牛の骨でできたヘラで優しくなじませる。引き裂かれていても正しい場所に置くと吸い付くように形が噛み合う。噛み合ったときの気持ちよさはジグソーパズル以上だが、ピースの数だけ苦行が待ち構えているとも言える。
 修復作業を続けること2日。引き裂かれたカバーは、傷跡が痛々しく残ったままだがどうにか1枚の紙へと戻った。遠目で見るぶんには分からない程度に修復できたから良しとしよう。