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ゆっくりと狂っていく

by 唐草 [2019/07/13]



 雨の降っていない週末って、なんだか久しぶりな気がする。梅雨に突入して以来、ずっと雨模様の週末が続いていたような記憶がある。今年の手ごわい梅雨のせいで、ぼくの自転車はすっかり出番を失っていた。
 自転車には、通勤のために平日は毎日またがっている。でも、それは通勤用のクロスバイク。自転車道楽が趣味のひとつであるぼくは、用途に合わせて3台の自転車を使い分けている。雨のせいで出番を失ってしまったのは、スタンドすらついていないサイクリング専用のマウンテンバイク。娯楽のための1台という贅沢な存在である。
 もうどれぐらい乗っていないのだろう?5月の連休前に腰を痛めて以来、ずっと乗っていなかったので2ヶ月以上放置していたことになる。
 久々に雨が上がったので、今日こそは全力で乗り回してやろうと玄関の片隅に置かれた黒いフレームのマウンテンバイクを引っ張り出してきた。だが、すぐに乗ることはできなかった。サドルやフレームの上に埃が積もり、タイヤの空気圧は下がり、ギアやチェーンはオイルが汚れを吸着して重油のような見た目で固着していたし、スポークの間には蜘蛛の巣が張っていた。その姿は、くたびれた幽霊屋敷を連想させる無残さがあった。これが2ヶ月余り屋外で放置して乗るという最大のメンテナンスを放棄した代償である。
 雑巾で埃を払い、油を注して駆動系を蘇らせていく。時間はかかったが、自転車は次第に輝きを取り戻していった。でも、まだ走り出すことはできなかった。
 ブレーキのバランスが壊滅的に狂っていたからだ。レバーを握っていないのにブレーキパッドがリムに当たっていた。車輪が回るたびにシュッシュと擦れる音がする。これも放置の影響だろう。
 自転車のブレーキ(Vブレーキ)のバランスは、ばねを抑える数本のネジの締め具合で調整されている。これが自然に狂うということは、ぼくの知らないところでネジが勝手に回ったということになる。乗っているときは振動などでネジが緩むこともあるだろう。でも、ただ停めているだけなのにネジが勝手に回ることなんてあるのだろうか?ちょっと想像できないが、目の前の自転車でそんな怪現象が確かに起きている。
 バランスを元に戻すためドライバーを慎重に操った。調整の結果から言えることは、この2ヶ月間でネジが合計で1/4周分程度動いたという結論である。実に不思議だ。