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地球からの侵略者

by 唐草 [2019/04/06]



 宇宙探査衛星はやぶさ2の活躍が目覚ましい。最近の多くの宇宙開発は高度に専門化しているため、ぼくのような知識のない門外漢からは何をしているのかさっぱりわからない。ぼくらの頭上をグルグルと周回している国際宇宙ステーションで日々どんな実験開発が行われているのかも知らないし、仮に説明してもらっても前提知識に乏しいぼくの頭ではほとんど理解できないことだろう。それらの宇宙開発に比べると、はやぶさ2のミッションはなにをしているのか分かりやすい。地球誕生の起源を探るという高尚な目的が背後にあるとはいえ、雑に言えば遠くに行って石を掘ってくるだけだ。親しみを感じるほどの明快さである。
 先日行われたインパクタ(SCI)をぶつけて小惑星の表面を破壊して破片を採取する実験は、説明の動画を見ている限りSF映画のワンシーンにしか見えない。実際の映像を見ても、その感想は変わらないだろう。直線距離で3億キロ以上離れた小惑星に行っクレーターを作ってこようなんて考えは、スケールの小さな常識で凝り固まったぼくの頭からは到底生まれない発想だ。緻密に計算されつくした大胆な作戦という感じで爽快感すら覚えている。
 しかし、ぼくの感想は完全に地球側の感想である。もし、ぼくがリュウグウに住んでいたらまったく別の感想を抱いていただろう。
 話を分かりやすくするために地球が未知の知的生命体の調査対象になったと考えてみよう。
 衛星軌道から観察しているだけでは、地球内部の地殻の情報が分からない。じゃあ、どうするか?宇宙船で直接着陸してしまおうか?いや、それでだけでは手ぬるい。大きな隕石でも落として地面をえぐってみるかという悪魔の発想である。はやぶさ2が直径0.7kmのリュウグウに打ち込んだインパクタの大きさは直径135mmになるそうだ。これをリュウグウのサイズが地球サイズだったとして換算したら、直径約2.5kmの隕石を地球に打ち込んだのと同じ計算になる。恐竜絶滅のきっかけになったと推測されている隕石よりは小さいものの、ぼくらの文明を十分に滅ぼしうるサイズだ。きっと地球は数年にわたって灰に覆われることになるだろう。SFの中なら間違いなく宇宙の彼方からやってきて地球支配を目論む悪役のやることである。
 もしリュウグウに微生物でもいれば、地球人は完全に侵略者として目に映ることだろう。
 はやぶさ2の成し遂げた成果は、UFOに乗って遠い宇宙から地球へとスペースインベーダーに恐れをなしていた地球人がついに侵略者側にまわった記念すべき第一歩なのである。宇宙の、いや太陽系の中だけでもいい、もっと多くの場所に人類の足跡を刻んでほしいものである。