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オイルを片手に

by 唐草 [2019/04/13]



 優柔不断で他人の意見にすぐ流されるぼくだけど、自転車が好きだという意見だけはブレることなく一貫して主張し続けている。
 では、自転車の何が好きなのか?
 例えば、鉄道好きを考えてみよう。ここのところ鉄オタの悪評ばかり耳にするが、鉄道好きは細分化されている。「実際に乗るのが好き」、「写真に撮るのが好き」、「車体のデザインが好き」とか様々な多様性があるらしい。もっとも傍からではそんなこと分からないけれど。
 同様に自転車好きにも様々なタイプが居る。「長距離乗るのが好き」、「かっ飛ばすのが好き」、「バラバラのパーツから組み上げるのが好き」、「メンテナンスするのが好き」、「メカとしての自転車好き」などと鉄道好きに負けないぐらい多様化している。とは言え、どんなタイプであれ根底には乗るのが楽しいという共通した感覚がある。だから、鉄オタのような同族での争いはめったに起こらないし、起きたとしてもトップスピードや走行距離で白黒つけることができる。
 さて、ぼくはどのタイプの自転車好きなんだろう?自分でもいまいちよく分かっていない。
 長距離乗れたら楽しいだろうなとは思っているが、膝が悪いので日本一周どころか1日100kmすら走れない。たぶん50kmが限界。速度に関してもロードバイクよりマウンテンバイク派なので35km/hも出せれば大満足。太い国道で乗用車を煽りたいとかは考えてはいない。むき出しの歯車やチェーンは無骨でかっこいいと思っているが、自転車のシルエットなんてどれも似通ったもの。自動車のように外見の奇抜さとかは少ない。ある意味、自転車の見た目は機能美の世界であり外見にこだわる必要はないと考えている。
 愛好家の形態をひとつずつ選別していくと、最後に残るのはメンテナンス好きというカテゴリーな気がする。ボロボロになった自転車のレストアには手を出していない。でも、サイクリングの前にチェーンやギアに油を差して、リムやブレーキの汚れを磨いているときに面倒だと感じたことはない。むしろ、磨かれて輝きを取り戻していく金属パーツを見て大きな満足を感じている。
 そんなぼくにとって、駅前などにある公共の駐輪場は苦痛に満ちた場所なのである。
 自分の隣のレーンに停まっている自転車が赤いサビに覆われてボロボロなのが目に入ったら、みなさんはどう思うだろうか?思うも何も、多くの人は隣のレーンの自転車の状態など気にもかけていないことだろう。ぼくも無視できればどれだけ気が楽だろうか。
 自転車好きの性がそうさせるのか、隣の自転車もしっかりとチェックしてしまう。そして、サビに覆われた姿を目にすると油をさしたくてたまらない衝動に駆られてしまうのだ。
 「なんでこんなにボロボロな状態を無視して乗っていられるんだ」と怒りと悲しみが同時にこみ上げてくる。サイクルオイルじゃなくてKURE 5-56でもいい。ちょっとでも油をさせば、乗り心地はシルクに包まれたかのように改善するというのに。
 もう、カバンに5-56のスプレーを忍ばせて、問答無用に注油しまくろうかな。