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難入力ネーム

by 唐草 [2019/04/26]



 春は出会いの季節でもある。会社には新入社員がやってくるし、学校は新入生であふれている。新たな出会いをどんな思いで迎えるかは、その人次第だろう。
 ぼくのように基本的に人見知りで非社交的な人間にとっては、やっかいな季節である。それなのに何の因果か大学の講師なんて一人で大人数の相手をする仕事を引き受けてしまっているので、毎年何十人もの出会いがある。新たな出会いは、様々な面で緊張感をもたらすのである。
 春の出会いの一番の悩みは、名簿である。自分の受け持つクラスに難読ネームがいるのではないかとドキドキしてしまう。必修の授業を担当しているので、クラスの割り振りは事務方の采配だけで決まる(ただし、ぼくの英語力が中学2年生程度だということが広く知られるようになったので留学生を受け持たないようにだけは配慮されている)。難読ネームな学生が教室に来るかどうかは、完全に運任せである。
 ここ数年、キラキラネームだとかDQNネームだとか言われる日本よくある名前から逸脱した、きつい言葉で言い直すのなら個性の意味を履き違えた名前が増えているらしい。ただ、キラキラネーム増加世代はまだ小学生ぐらい。キラキラネーム旋風は、少なくともまだ大学までは及んでいない。でも、数年後にはぼくのクラスの名簿も開くとキラキラと星が飛び出すような名前であふれる日が来てしまうかもしれない。その頃までには、講師の職を辞すことにしよう。
 とは言え、大学で下の名前を呼ぶことは滅多にない。ぼくが女子学生のことを下の名前で呼んでいたらセクハラ案件になりかねない(ちゃん付したらレッドカードだろうな)。だから、実際には名簿がキラキラネームでクリスマスイルミネーションのように輝きだしても大きな問題ではなかったりする。
 それよりも厄介なのが、苗字の方である。よく見る漢字の組み合わせで、読みの音も普通。でも、通常の漢字変換では候補に出てこない入力の難しい苗字が一番厄介なのだ。学生からのメールに返信する際に変換をミスってしまうことが多々ある。それを学生に指摘されると、本当に申し訳ない気分になる。
 それでも学生相手なら「ごめんねー」で済むかもしれない。でも、相手が職場の上司(要するに教授クラスの人々)だとかなり気まずい。
 よりによって今の所属は、そんな難入力な苗字の人々に囲まれている。音は本当に普通なのに漢字の組み合わせが微妙に違う。普通の変換はできないのでコピペで入力するしかない。例えるなら「たなか」なのに「多仲」と書くような感じの人々だらけなのだ。
 あまりに難入力苗字が多いので、最近では採用担当が珍名コレクションをしているのではないかと疑いだしているほどである。