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予想外のおみやげ

by 唐草 [2023/06/25]



 もらって嬉しくないお土産を「イヤゲモノ」と命名したのは、みうらじゅん。なぜイヤゲモノは存在するのか?どうして売れてしまうのか?おそらく旅という非日常が、旅行者のテンションを爆上げさせて「珍妙さ=面白さ」という短絡的な発想をもたらすのではないかと睨んでいる。
 ぼくの部屋にも1つだけイヤゲモノに分類されて然るべきものが転がっている。10年以上前に新婚旅行のお土産としてもらったものだ。バリ島土産だったはず。新婚旅行のお土産というだけで胸焼けしそうだし、出処を含めて陽なオーラで陰なぼくを焼き尽くそうとしているかのようだ。
 そのお土産は素朴な木彫りの孫の手。直立した人がまっすぐ頭上に手を伸ばしていて、曲がった指の部分で背中を掻けるようになっている。鉄棒にぶら下がっているようにも、罪人が手首を縛られ吊るされているようにも見える。手彫りのせで呪い的な不気味さが漂う。
 よく見るまでもなく雑な品だ。伝統工芸風な雰囲気を装おうとしているが、彫りの粗さや電動工具を使った痕跡が見て取れる。造形を見ると素朴なのではなく、単純に下手だとしか思えない。
 あの夫婦がこのお土産を選んだのは、イヤゲモノを送るつもりだったからだろう。彼らは、ぼくがこういうものが好きなのを知っていたし、良いものを送ってお返しとかの話がでるのも避けたかったはず。結婚祝いのパーティーを新婚旅行の自慢話のラブラブムード一色にしないためのお土産だったのだろう。他の参加者にもろくでもない物を送っていた。
 彼らもすぐに捨てられると思っていただろう。ぼくも呪いの人形みたいなものを取っておくつもりはなかった。
 ところが、どうしたことか。その孫の手は今でも部屋にある。雑な加工の尖り具合が、背中を掻くのにちょうど良い。手放したくない品の地位を確固たるものにしている。お土産が、そんな地位を得たことなんて他にはない。
 こんなことになろうとは、ぼくも思っていなかったし、あの夫婦も考えてなかっただろう。更には彫ったお土産屋の職人だって思ってなかったはず。しかし、現実にはこんなまさかの結果が待っていることもある。