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小さなスランプ

by 唐草 [2023/04/11]



 卵をうまく割れなくなるという一風変わったスランプについて書いたことがある。卵を割るときの力加減が分からなくなってしまう。力を入れすぎて指で殻を粉砕して黄身を割ってしまうこともあれば、慎重になりすぎてボウルの縁に卵をぶつけても小さなヒビが入るだけで全然割れないこともある。
 一度こうなってしまうと卵を割るたびに力加減のことを必要以上に考えてしまう。「前回は粉砕したので今度は力をセーブしよう」と考える。すると殻にヒビすら入れられなくなる。反省を踏まえて次は「ちょっと強めに」と考えるも黄身を崩すことになる。なので、やっぱり力を抑えようと考える。こうなるとドツボにはまっていく。
 何も考えずに誰かと話しながら卵を割ればおそらくうまくいく。それなのに一人悶々と考えるからドンドン分からなくなっていく。これが卵を巡るスランプだ。
 幸いなことに卵の値段が高騰している今、ぼくは卵スランプとは無縁だ。高価な卵を台無しにして悲嘆に暮れるなんてことには陥っていない。
 だからといって絶好調だとも言えない。実は、卵スランプよりも小さなスランプに陥っている。
 コーヒーを淹れようとお湯を沸かすとお湯の量が絶妙に足りないということを繰り返している。ヤカンを振って最後の一滴までお湯を出しても、まだコーヒーが苦すぎると思うぐらいの量なのだ。あまりにも毎回同じぐらい足りないので、水の量を計って狙っているかのよう。けれど、当然そんな意味不明なことはしない。
 ガス代も上がっているので無駄なくお湯を沸かそうと考えていることが根本的な原因だろう。狙ってジャストな量を沸かせるのなら地球にも財布にもエコ。でも、今のぼくのように足りない分を沸かし直すのは、二度手間だし、追加で沸かす分は多めになることが多い。間違いなくトータルでは損をしている。
 ならば初めからちょっと多いと思う量を沸かせばうまくいくのだろうか?
 不思議なことに全然上手くいかない。ちょっとのハズがマグカップ半杯分ぐらい余計に沸かしてしまう。卵の時と完全に同じパターンのスランプだ。コーヒーぐらい気持ちよく淹れたいよ。