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次のレジェンド

by 唐草 [2023/04/06]



 坂本龍一死去のニュースの扱いの大きさに驚いている。連日メディアで特集が組まれているようだし、SNSでも大きな話題となっている。ネットだけでなく身近な雑談でもこの話題が挙がる。そして「戦場のメリークリスマス見たことある?」と聞かれるたびにぼくはバツの悪い顔をする。
 誤解なきように先に書いておくが、騒ぐような些末なニュースだと言いたいわけではない。キャリアと実績、そして作り上げた作品を考えれば、音楽界のレジェンドと呼ぶに相応しいことに一切の異論はない。
 ぼくが驚いているのは、そんな世界的なレジェンドの遺したものにまったくと言うほど触れていなかった自分自身に対してだ。恥ずかしながら曲のタイトルを聞いてもピンとこない。おそらくCMなどで誰の作品かも知らずに聞いた程度の接点しかない。
 ぼくよりだいぶ上の世代なので作品に触れる機会が少なかったのは事実。とは言え、キャリアを考えれば、もう少し触れる機会があってもよかったように思える。まるで意図して避けてきたかのように縁遠い。
 そのせいで、訃報を耳にしたときも「なんか名前を聞いたことある人だ」程度の冷めた反応だった。音楽シーンを席巻していた時代を目の当たりにしてきた人からすれば、ぼくの反応は信じられない冷淡なものに映るのだろう。しかし、自分が生まれたときに既に評価が定まっている人のすごさを後追いで理解するのは難しい。
 今回の訃報を受けてさまざまな感情を抱いている人がいる。ファンとして死を悼む人、時代の移り変わりを感じる人、才能の喪失を嘆く人。ぼくには悲しむ彼らの気持ちを理解できそうにない。身近な人を亡くしたときとは違う感情なのは分かる。憧れを失ったような感情に近いのだろうか?ぼくは、誰かに対して熱心なファンになったことがないのが大きい。
 それに、ぼくの世代は興味や関心が多様化したせいか、時代を代表するレジェンド感のある音楽家を思い浮かべるのが難しい。圧倒的な人がいないとも言えるし、絞るには多すぎるとも言える。
 残念ながら自分と同世代のレジェンドの存在に気づくのは失ってからになるのかもしれない。