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VR落書き

by 唐草 [2023/04/08]



 ネットで「首都高のVRがひどい」と盛り上がっていた。ネットでは負の意見ばかり目立つので評価を鵜呑みにせず、自分で判断するのが大切だ。
 真偽を確かめてみたが、酷評もやむ無しという残念な結果を目にすることになった。そこにはVRとWeb 3.0の課題が露呈していた。
 見たのは『首都高日本橋区間地下化事業~「未来の日本橋」』という企画。首都高の日本橋区間地下化が完了後の景色を体験できるVRコンテンツだ。VRの使い方として適切なのに残念な結果になった理由は2つある。
 1つはVRのクオリティが低いこと。「PS2並み」とはうまく言ったもの。建物のポリゴン数が少なく、テクスチャ解像度も低い。そのせいで仮想空間は前時代的なノッペリとした味気ないものになっていた。
 これは致し方ない面もある。この企画はNTT XRのサービスを利用しているが、そのサービスは多くの端末で再生できることを主眼にしている。そのためブラウザの3D機能だけでVR空間を実現している。技術的制限の中で頑張っているが、20年ぐらい前のゲームのように見えてしまうのも事実。
 CGクオリティと誰もが見られることはトレードオフ。そう分かっていても、ショボいものを見せられるとVRに幻滅してしまう。これがVRの問題だ。
 2つ目はWeb 3.0の問題。Web 3.0ではユーザクリエーションがキーポイント。仮想空間に自分の作ったデジタルデータを置けるだけでなく、売れるようになると言われている。
 今回のVRでは売買は無理でも、他人と共有するVR空間に3Dオブジェクトや画像を置けるようになっていた。うまく使えばVR首都高に車を走らせられるかもしれない。
 だが、当然うまくいっていない。政治家の写真が貼られたり、視界を塞ぐ巨大な物が置かれていた。これって街の落書きみたいなもの。現実と違うのは、誰もがワンクリックで落書きできてしまうこと。ぼくも日本橋に樽を置いた。
 真に自由なVR空間ができたら、それこそ落書きされた便所になりそう。このいたずら心が作り出すカオスを乗り越えない限りWeb 3.0なVRに未来は来ない。