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1000歳

by 唐草 [2024/02/12]



 エルフが1000年ぐらい生きるというのは、もはやファンタジーの常識。だが、ぼくはこの設定だけは受け入れられない。たとえ魔法で何でも片付けられるファンタジーの世界であったとしてもだ。
 エルフは長寿という設定がどこから生じたものなのかは知らない。しかし、現代ファンタジーの開祖というべきトールキンの世界観では長寿な種族として描かれている。
 ぼくもトールキンの世界観にワクワクした一人だったが、今では迷惑な爺だったのではと疑っている。ヨーロッパに点在する古い伝承をまとめた点は民俗学者的だと評価できる。だが、そこに独自の解釈を加えて世界を画一化してしまったのはいただけない。日本で言えば妖怪のイメージを固定化してしまった水木しげるや、独自の歴史解釈を史実のように広めた司馬遼太郎に近い。
 トールキンの仕業かどうかは定かではないが、エルフは1000年生きるそうだ。別に1000年生きる生き物がいてもいい。ぼくが受け入れられないのは、1000年生きた事によって生じるジェネレーションギャップが描かれていないことにある。
 ファンタジーの世界は中世封建社会の後半をベースに描かれている。人間の歴史に当てはめれば15世紀ぐらいに相当する。日本でも戦国時代に突入する少し前の室町時代後期だ。
 そんなファンタジーな時代に生涯を閉じようとしている1000歳のエルフは5世紀生まれ。日本なら古墳時代。生まれた頃は埴輪を作っていたのに、死ぬ頃には現代に続く高度な金属加工が可能になっている。
 そして15世紀に生まれたエルフが死ぬのは25世紀。生まれた頃は鉄砲すらなかったのに、世界大戦を生き抜き、IT社会に適応して、きっとこの先に来るシンギュラリティすら超えていく。もしかしたら他の惑星で死ぬかもしれない。
 1000年ってそれぐらい長い。
 1000年を生きるということは、現代の高齢者がスマホに戸惑うどころの話ではないはず。きっと最新魔法に戸惑い「あんな魔法を使う今時の若いもんは!」と老害発言もするだろう。そうあるべきだ。
 1000年という数字だけ盛られていて薄っぺらい感じが、どうしても受け入れられない。