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SLIMの精度

by 唐草 [2024/02/06]



 先日、日本の月面探査機SLIMが月面着陸に成功した。最大の目標であるピンポイント着陸には成功したものの上下逆で太陽電池が機能しないというトラブルに見舞われた。だが、かえって大成功を収めるよりも印象に残った感がある。ちょっとおマヌケで可愛い感じだ。
 誤差100m以内の着陸を目指す難ミッションに挑み、誤差55mという成績を収めた。これは人類史上もっとも誤差の小さい月面着陸だそうだ。地球から38万kmも離れた月面へ向かい誤差が55m。距離に対する誤差は0.000014%とも表せる。
 世間が「すごい!」と言うから55mの誤差はすごいのだろうと鵜呑みに盲信している。でも、人間の感覚で55mといったらかなりの距離である。
 月面着陸のミッションはいくつかの段階に分かれている。打ち上げに始まり、地球からの脱出、月への飛行、月の軌道に乗り、最後が着陸なのだろう。だから38万km飛ぶことと100mの誤差で着陸することは別の課題とも言えるように思える。
 自動車での旅に例えると、月まで行く38万キロの飛行は高速道路を走るようなもの。そして、最後の着陸は目的地の駐車場に車を停めるようなものと言えるのではないだろうか?もし、この比喩が正しいのであれば行程が長いことと着陸の制度は直接関係ないと言える。それは車で100km走るのと1km走るのではぜんぜん違うけれど、最後に駐車場に止めるときの技術は走行距離に関わらないのと同じだ。
 車の例えを続けるのであれば、従来の月面着陸は利用者が自分の他に誰もいないことを良いことに広大なショッピングモールの駐車場のどこかに収まれば良いぐらいの雑さだった。SLIMの着陸は、ちゃんと駐車レーンを守って車を止めたぐらいの精度があるのだろう。
 理屈を考えれば55mの誤差というものが、従来からすれば0に等しいぐらい小さな誤差だということは分かる。でも、人間の日常的な感覚だとどうしても「結構ズレてんじゃないの?」という感覚を排除できない。
 それでもぼくは口から出かかった「ズレすぎ!」の声を抑えて、周りに合わせて知ったかぶりで「SLIMすごい」と言う。