by 唐草 [2020/04/18]
ひとり静かに自宅で作業に打ち込んでいたい。こんな小さな願いも潰えてしまった。どこにでも冬眠中のカエルを無理やり叩き起こすようなガサツな人がいるものだ。悲しいが、これも組織に属している宿命である。
来週にZoomを介したオンライン会議への出席を強制されてしまった。話した方が早く済むこともあるが、議題を見る限り「メールで共有するだけでも良いんじゃないか?」という疑念が払拭できない。とりあえず流行りのものは使っておけという感じだろうか?
資料を共有しながら打ち合わせを行いたいので、スマホからではなくPCから参加したい。というのは建前だ。本音としては、自室を誰にも見せたくないという切なる願いがある。もし作業机に顔が映るようにスマホを置いたら、背景はマンガしか入っていない本棚になる。ひた隠しにしている一面を不用意に覗かれるのは不愉快だ。
ミーティングが始まるまでに背景をどうにかする必要がある。
本棚を大きな布で覆うというのが簡単な対処だろう。でも、そんなことをしたらシーツの山の間からビデオ会議に参加しているという絵になるより他にない。これでは、「隠したいものがたくさんあります」と大声で宣言しているのと同じ。
最終的にぼくが選んだ方法は、カメラを使わないという方法だ。
ぼくが使っているPCは、カメラ付きのノートPCだ。でも、小さな画面と打ちにくいキーボードを使う気はないので、モニターとキーボード繋いでデスクトップPCのように活用している。興味のないビデオ会議のためにこの快適な環境を崩すつもりはない。なにより「デスクトップPCを使っているからカメラがない」という言い訳に利用することができる。
だが、ひとつだけ問題がある。閉じているとマイクの集音性が落ちるというリスクである。
そこでぼくは、10年ぐらい前にネットゲームでボイスチャットをするために購入したヘッドセットを使うことにした。だが、PCオタクが築き上げた10年分のガジェットの地層はあまりにも厚かった。メドゥーサの頭のようになったケーブルを掻き分け目的のヘッドセットの層にたどり着くのに30分も要してしまった。
果たして、10年ぶりに発掘されたワイヤレスヘッドセットは実用に耐えることができるのだろうか?なんだか太古の発掘物を活用しようとしている気分である。