by 唐草 [2022/05/18]
先週、職場のトイレの温便座がオフになっていてぼくの尻が悲鳴を上げているという話を書いた。この状況を打開するために、ぼくは施設用温便座の管理者権限奪取を誓った。
ぼくは、世間的にプログラマーやネットワークエンジニアとみなされることが多い。事実、業務改善のためにプログラムを書くことも多いし、サーバマシンを設置してネットワークを敷設することもある。ところが、ぼく自身は自分のことをプログラマーともネットワークエンジニアとも思っていない。
ハッカーだと自認している。これを公言するのは、中二病的で小っ恥ずかしいので口にはしていないけれど。
ハッカーを自称しているのは、ゼロから何かを作るのは得意ではないから。得意なのは、誰かが作ったシステムの改造と機能の穴を利用した拡張である。さすがにセキュリティーホールを活用するようなことはしないけれど、マニュアルに載っていない使い方を見つけることに心血を注いでいる。
この性は、トイレでも発揮された。温便座の隠しコマンドを見つけて管理者権限をゲットしようと本気で考え、不用意に尻穴を洗うことになっても臆することなく隠しコマンドを探し続けていた。
その姿は、何のためにトイレの個室にこもっているのか分からなくなるほどだった。
今日も便意を口実にトイレのハッキングを試みようとした。そして、絶望した。
便座が暖かかったのだ。
ぼくの目的は既に達成されていた。これまでの創意工夫と努力が泡と消えた瞬間だった。
いったい誰がやったんだ。
清掃の人が温便座がオフになっていることに気づいて直したのだろうか?それとも、ぼくを上回る力量の便座ハッカーが同じフロアにいたのだろうか?
ハッカーの力量は、同じことをどれだけ早く、そして速くやるかで決まる。もし、便座ハッカーがいるのだとすれば、悔しいけれど今回はぼくの完敗。いったい誰なんだ。
用を足して個室から出たぼくの顔は、便秘に悩んでいるかのように険しかったに違いない。何しにトイレに行っているのやら。