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腫れ物を運ぶ

by 唐草 [2020/01/24]



 職場で台車に載せてサーバを運ぶという未来的なんだか原始的なんだか判断に迷う作業をした。内蔵ストレージの合計は12TB。それを10分かけて運んだので、転送速度換算すると160Gbpsとなる。脅威の速度だ。AWSの最速データ転送サービスが、トラックによるサーバ物理輸送なのにも納得できる数字である。
 ぼくたちがサーバを運ぶことになったのには、悲しい理由がある。そもそものきっかけは、ありがちな発注ミスである。事務処理のミスでぼくらの部署が発注したサーバが、サーバルームのある建物とは別の棟の事務室へ届いてしまったのだ。
 普通だったら裏方業務に従事する事務方が、後始末を行う案件である。ところが事務の連中は「精密機器なので責任が持てない」とかもっともらしい理由をつけてキッパリとNoを突きつけてきた。なんで、自分たちのミスの尻拭いをしないんだ。
 責任の所在を明らかにするために押し問答をしていても埒が明かない。しかたがないので、運搬をすることを渋々ながら受け入れた。
 でも、ぼくらにも別の仕事が山ほどあるので、すぐに運搬搬入することはできない。だから、しばらく事務室に置いておくことにした。この判断が、またしても面倒なことを引き起こした。発注担当の事務方と荷物が届いた事務室の部署が違うのだ。置くことが決まったら今度は事務室の人々が騒ぎ出した。
 「こんなに大きな箱を2つも置いていたら業務に支障が出る」それが事務室の言い分だった。確かに箱は大きい。1Uのラックマウントサーバが入った箱は、本体よりずっと多い量の緩衝材が封入されている。厚着で着膨れした人のようである。とは言え、客観的に見れば事務室の奥の隙間にちょうどよく収まっているようにしか見えない。アスクルから届いた大量の事務用品の方が遥かに場所を取っている。
 結局、どちらの部署もサーバが怖いだけなんだ。今回のは20万円の機器なので、ノートPC程度のお値段でしかない。しかも、ラックサーバは鉄鋼筐体なのでデスクトップPCより堅牢だ。でも、普通の人はそんなことを知らない。サーバと言えば、得体のしれない精密機器の塊で、お値段は自動車並とか考えてしまうのだろう。サーバを手で触れてはいけない腫れ物として見ているようだった。
 結局、ぼくらが予定を前倒しして搬入を行った。今日ほど事務方に歓迎された日は初めてである。