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時代遅れのフルダイブ

by 唐草 [2024/05/15]



 「人間が想像できることは人間が必ず実現できる」と言ったのはSF作家のジュール・ヴェルヌ。夢を叶えたいという純粋な気持ちが人間を突き動かし、人類に進歩をもたらしたことに異論はない。
 これまでSFで描かれた未来は、どれだけ実現しただろう?実現したものもあるが、残念ながらまだ実現していないもののほうが多い。高度なAIを備えたロボットはもう少しで実現しそうな所まで来ている。でも、車はまだ地面を走っているし、電車はチューブの中を走っていない。月面旅行だってまだ無理だ。宙に浮かぶ立体ホログラムもない。せいぜい専用の箱の中に投影されるぐらい。
 こういう未来感あふれる機器は実現しないのだろうか?むしろ技術的に難しいというよりも、十分に発達した科学が実用の意義なしと冷静な判断を下した感がある。つまり、昔の価値観で想像した「古い発想に基づく未来予想」は既に時代遅れなのだ。
 空飛ぶクルマは次の万博でも引き合いに出されるほど未来感にあふれている。その胸のときめきは認めるけれど、「飛べるんだったら走れる必要ないよね」という冷静な事実に対して反論できない。
 また、仮想現実の世界に生きるという未来予想はコンピューターの発展とともに進化してきた。映画で言えば『トロン』や『マトリックス』の系譜だ。さまざまな方法で人体をコンピューターにつないで仮想世界で冒険を繰り広げてきた。いわゆるフルダイブの仮想体験というやつ。ぼくもいつかはこんな世界(できれば平和な方が良い)を訪れてみたいと夢見たものだ。
 だが、ゴーグル型VRの閉塞感を考えるとフルダイブVRの未来に希望を持てなくなる。もしかしたらフルダイブVRという発想が、空飛ぶクルマと同じで古い未来予想でしかないのかもしれない。そんな風にさえ思えてきた。
 実際のところ、VRのためにゴーグルを着けることすら面倒。フルダイブのために歯医者にあるような大きな椅子に座って頭に端子をつなげたり、冷蔵庫みたいな巨大な装置に入りたいとは思わない。コントローラーを握るのが、ぼくにできる精一杯だ。
 未来は今はまだ想像できないものであって欲しい。