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名を知らぬ出来事

by 唐草 [2019/07/19]



 世の中のすべての物や出来事に名前が付いているのだろうか?きっと、名前の付いていない「もの」や「こと」は多くある。大きすぎたり、あるいはその逆に小さすぎたりして人間の目に見えないスケールのものなんて名前が付いていない方が多いかもしれない。それどころか、ぼくらの目の前に当然のように存在しているものにすら名前が付いていないことだってあるだろう。
 少し前に話題になった「もったいない」という言葉がある。日本人からすれば、ごく当たり前の価値観だ。むしろ当たり前すぎて、他の言葉で「もったいない」を説明するのが難しいほどである。ところが、「もったいない」に合致する言葉がある外国語は少ないそうだ。
 言葉が無いのは、それに対応する現象を見いだせていなかったり、コミュニティーで共有する必要のない価値観だからなのだろう。「もったいない」という概念が希薄な価値観とは、どんなものなのだろうか?ただ単にケチだとみなされてしまうのだろうか?言葉を知っているぼくからすると、無い方が不思議にさえ思えてしまう。
 これとは逆のパターンもある。日本語で説明しようとすると辞書の説明のように長くなってしまう出来事や感情を一言で表せる外国語もある。ぼくらからすると、そんなことに名前があるんだと感心さえしてしまう。この感心に似た感情こそ、英語圏の人が「もったいない」を知った時の感情なのだろう。
 なんでこんなことを考えているのかというと、表現する言葉が見つからない出来事を引き起こしてしまったからだ。もっとも、ろくに読書もしないぼくの語彙が、あまりにも貧弱なだけかもしれない。
 「忘れ物」という言葉を知らない人は、いないだろう。忘れ物とは、必要なものをどこかに意図せず置いてきてしまうこと。意図せずというのが、忘れ物のポイントだ。意識的に置いてきたら、それは「捨てた」と呼ぶべきだ。
 では、その逆は?これが、今日のぼくを悩ませている。つまり、持ってきてはいけないものを無意識のうちに持ち帰ってしまったという行為の名前である。意図的に持ち出したのなら「盗む」ということになる。そうじゃないんだ。気が付いたら鞄の中にあった場合の名称だ。
 なんだか万引きの言い訳をしているような感じになってきたが、今のぼくがまさにその状態にある。返すべき鍵を返さずに持ち帰ってしまったのだ。ぼくの鍵なので大きな問題にはならないが、紛失のリスクなどから持ち出さないことを強く推奨されている。そんな鍵が、鞄の中に潜んでいたのだ。
 ぼくは悪くない。でも、それを適切に表す言葉が見つからない。だからうまく言い訳ができないのだ。