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超高級暖房機器

by 唐草 [2019/05/10]



 職場の居室に入ったら、不快なムッとする暑さが体を包み込んだ。晴れ渡った今日は午前中から夏を思わせる気温になっている。だが、この部屋の温度は外よりも高い。もし、ぼくのいる部屋が南向きで大きな窓があって、さながら温室のような環境の部屋ならば、外気よりも暑くて不思議はない。でも、この部屋はそんな日当たりの良いリビングのような間取りにはなっていない。太陽光を大きく取り込むガラスもないし、なにより北向きだ。外気温より温度が高くなる要素はなにもない。
 だとしたら部屋が暑くなっていた理由は、1つしか考えられない。部屋の中に熱源があるということだ。
 もちろん暖房がつけっぱなしになっているなんて初歩的なミスは犯していない。電気ケトルが容量いっぱいのお湯を沸かして、熱い蒸気を噴き出しているなんてこともない。ぼくが入るまで誰もいなかった部屋は、いつものようにPCのファンが静かに回る音が微かに響いているだけだった。見渡す限り変わったところなんて何もなかった。
 こういう時、熱を視覚的に確認できるサーモカメラでもあればすぐに原因を特定することができるだろう。もし、サーモカメラがなくても猫がいれば彼らの動きで暖かい場所と寒い場所を見分けることができる。でも、サーモカメラもなかれば猫もいない。頼れるのは、ぼくの感覚だけである。温度計としては、あまりにも信頼できない。
 だが、ぼくの体で十分だった。熱源は、探るまでもなくすぐに分かった。
 部屋を温めていたのは、1台のコンピューターだった。DELLの大型タワーサーバであるPowerEdge T440が、背面の大きなファンから真夏の午後のように暑い風を気怠げに吐き出していた。さすが業務用サーバ向けPCだ。完璧な空調のあるサーバ室で使うものであって、人がいる部屋で使う代物ではないということを実感せずにはいられなかった。
 このサーバを本格稼働させたのは数日前からだが、もっと前から電源を入れてセットアップなどを繰り返してきた。でも、ここまで部屋を暑くすることはなかった。やはり外気が暑くなってきたので、廃熱が外に逃げなくなったせいなのだろう。
 そういえば、この春はあまり暖房をつけていなかった。つまり、その間もサーバ機からの排熱が部屋を温めてくれていたということか。超高級暖房機器として活躍してくれていたんだなぁ。エアコンの使用を抑えられたと考えると、ちょっとしたエコだったとも言える。
 PCの排熱が暖房になるという経験は、PowerMac G4を使っていた10年ぐらい前以来の経験だ。懐かしさを感じずにはいられない。