by 唐草 [2022/07/05]
エアコン無しでは眠れない暑い夜が続いていた。おかげで先週は24時間冷房の部屋に閉じこもっていた。今年はそのタイミングが例年より早かっただけで、冷房漬けの夏は今に始まったことではない。
皮肉なことに暑さに汗を流すよりも、安定した気温と湿度の涼しい部屋に籠もることで夏を感じている。
ぼくが幼かったころに24時間冷房を稼働させることなんてなかった。今ほど暑くなかったというのもあるが、冷房の性能が悪かったというのも大きい。温度設定も弱から強までの5段階程度だったし、室温に関係なく一定温度の冷たい空気を送り続ける冷蔵庫の親戚みたいな機械でしかなかった。24時間つけっぱなしにしていたら体の芯まで冷えてしまう。
省エネの概念も薄かった。今のように24時間稼働をさせたら無尽蔵に電気を浪費して寒い部屋に小さな火の車を走らせることになっていただろう。
それを考えると、エアコンの進化は凄まじい。24時間稼働でも家計への負担は小さいし、簡易的なAIを駆使して設定いらずで快適な部屋を作ってくれるようになった。
とは言え、AIの性能は十分とは言えない。ぼくの部屋のように奇妙な家具配置でL字型になった部屋だと困った動作を見せる。エアコンのセンサーは、ぼくがベッドに横になっているとL字のせいで人を見失う。ぼくがいるというのに無人判定をして最大限の省エネモードで稼働し始める。その弱い風は部屋の端まで届かず、ベッドは快適と言えない暑さになってしまう。
エアコンに嫌われているのだろうか?
この不快な状態を打破するための策を講じた。
L字の角に扇風機を置いて弱く冷たい風をベッドまで届ける作戦。夏に扇風機で冷風を遠くへ運ぶのは、ぼくの趣味でもある。だが、エアコンAIは扇風機に冷風を送らなかった。首振りをしている機械はライバルであり冷やすべき対象でないと即座に見抜いたようだ。
どうすればいい?
たどり着いた答は簡単だった。AIをOFFにするだけ。エアコンに自我なんていらない。昔のように冷たい風を吹き出すだけで十分なんだ。分かったか、AI!
エアコンが反乱を起こす日も近い。