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ミックスフライ

by 唐草 [2022/07/20]



 冷凍食品の発展と進歩は、ぼくらの食生活を一変させた。それは単に食卓に並ぶおかずの種類が増えたことにとどまらない。直接見る機会は少ないけれど、食材加工や物流といった生産現場にも多大な影響と変化を与えているに違いない。
 いまや餃子を食べようと思って薄い皮を買って自分で具を包むことはない。それどころかフライパンに油を敷くことすらなくなった。最近の冷凍餃子は油とトロミを固めた謎のブロックに包まれていて、何の準備もなくフライパンで焼くだけで理想的な仕上がりになる。カリッと焼けた餃子の羽を見るとあたかも自分の料理スキルが向上したかのような錯覚に陥ってしまう。
 進化したのは餃子だけでない。揚げ物全般の進歩も著しいものがある。今や素人が油であげるよりも、電子レンジで温める揚げ物のほうが美味しいほどだ。もう5年ぐらいコロッケを揚げていない気がする。
 こういう食の進歩のおかげで、ぼくらの日々の食卓はバラエティーに富んだものになっている。それは長い人類史史上最良の状況と言えるだろう。
 昨日は唐揚げ、今日はコロッケ、明日は餃子というような冷凍食品だよりの生活をしていて気づいたことがある。その発見は、実に単純なことなのだが、固定観念に囚われていて気づけなかったものだ。コンビニのおにぎりを2個だけ買うときに同じ味を2個買ってもいいということに気づいたときと同じように、目から鱗が落ちるのと同時に常識という鎖が外れ肩が軽くなるのを感じた。
 冷凍食品なので食べる分だけ解凍すればいい。それは量だけでなく、種類に関しても言えること。つまり、唐揚げとコロッケと餃子を同じ日に食べたって良いということ。このことに気づいてから、ぼくの食生活はさらに彩り豊かなものになった。ミックスフライ定食を自宅で楽しめるようになったのだ。従来のように「今日の夕飯はコロッケ」と一品に絞って考えていたらたどり着けなかった食卓の新時代である。
 ただ、この発見には代償もあることを忘れてはいけない。今、我が家の冷凍庫は封が切られて残量がよく分からない冷凍食品であふれている。