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扇風機と幽霊の季節

by 唐草 [2021/11/29]



 12月を目前にして、急に寒くなった。慌てて掛け布団を1枚増やしたのは、ぼくだけではないだろう。寒さが堪える朝が続いているが、これでも平年並みらしい。連日の寒さが身にしみるのは、まだ体が寒さに慣れていないというのも大きいようだ。
 布団は3毎掛けになったし、コートも厚手の冬物へと変わった。部屋で仕事をするときも暖房がフル稼働だ。昨今の省エネ性能の良いPCやモニタの発熱では部屋は温まらない。Macが暖房器具になっていたころが懐かしくもある。
 今年も仕事部屋を温めるのはエアコン。センサーが人のいる場所を見つけてピンポイントに送風できる機能が売りの比較的新しいモデル。だが、昨年も書いたようにこの機能が優秀すぎるがゆえに自室の温度が思い通りにコントロールできないでいる。
 ぼくの仕事部屋は、ど真ん中に本棚が置かれた妙なレイアウトになっている。PCの前に座ったときに席を立たずにすべてのものにアクセスできるという一点だけを考えたレイアウト。このレイアウトは人の動線を窮屈なL字に制限するだけでなく、エアコンの人感センサーの妨げにもなっている。だから、ぼくが座して動かずPCに向かっていると、エアコンはぼくの存在に気づけなくなる。エアコンからすれば、ぼくの存在は現れては消える幽霊のようなものなのだろう。
 幽霊に送風してやる義理はない。地球のために省エネだ。これがエアコンのもっともな言い分。
 また、L字の動線のせいでエアコンの温風もなかなか部屋に広がらない。机の下はいつまでも午前中の日陰のように冷たいのに対して、部屋の入口付近は明るい温室のよう。部屋の中に前線が生まれても不思議がないぐらいの温度差が生じている。これを解消するためには、昨年同様に扇風機が欠かせない。我が家では扇風機は夏だけでなく冬も活躍する家電だ。冬だけはサーキュレーターと呼んでおこう。
 こうして、ぼくの部屋ではエアコンが首を振る扇風機を人と見做して温風を吹き出している。相変わらず、生きた人間であるぼくは機械に無視され続けているのだ。我が家の風物詩であるとは言えテクノロジーに翻弄されている感が否めない。