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熱気球に乗って

by 唐草 [2023/03/29]



 空を飛ぶ乗り物は数あれど、ぼくにはどれもが縁遠い存在だ。
 飛行機雲がよく出る航路の下に住んでいるので、ふと見上げた空に遠くへと向かう大きな飛行機の小さな影を見ることは多い。とは言え、飛行機には20年近く乗っていない。この先、乗る機会があるとも思えない。
 飛行機以外の空を飛ぶ乗り物には、乗ったことどころか、触れたことすらない。ヘリコプターも、ハンググライダーも地上から見上げるだけ。ぼくの目に、それらが自由に飛ぶ姿への憧れの色はない。高いところが苦手なので乗りたくないというのが正直なところだ。
 先日、TVニュースでバルーンフェスタを紹介していた。映像では十数機もの熱気球が、遠目からだとぶつかりそうなほど密になって空を進んでいた。そこから熱気球の話になった。
 「熱気球って優雅そうだし一度は乗ってみたいね」と話を振られた。熱気球に乗ったことがない前提で進む会話は、世間話でよくある展開。当然ぼくは乗ったことがない。
 ぼくは、何気ない世間話の流れを一切読まず会話の流れをぶった切った。
 「絶対に乗りたくない」
 会話はそこで終わった。この取り付く島もない冷たい拒否は、ぼくの偽らざる本音だ。
 空を飛ぶ乗り物は数あれど、熱気球ほど怖いものはない。これがぼくの考えだ。優雅に浮かび風と共にゆっくり進む熱気球のどこが怖いのか?そんな風に思われても仕方ない。多くの人が、熱気球にロマンを感じているのは知っている。そして、それを否定するつもりもない。でも、怖いものは怖い。
 ぼくが熱気球に恐れを抱いたのは、2013年に起きたエジプトの気球事故がきっかけだ。この事故は、バーナーの炎がバルーンに引火して燃えながら上昇してた気球が燃え尽き、落下する凄惨な事故だった。観光客を中心に19人もの方が犠牲になった。
 この事故を知って以来、熱気球は一度トラブルに巻き込まれれば、炎に身を焼かれながら落下死する乗り物と考えるようになった。2つの根源的な恐怖に囲まれる最期。そんな死に方は絶対にイヤだ。
 だから、絶対に熱気球に乗りたくはない。正直、誰かが乗っているのを見るのもイヤだ。