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聞き取れない声

by 唐草 [2021/08/27]



 世の中には、様々な分野に自分自身の能力を活かしたプロがいる。
 テレビ・ラジオやネットなど放送の世界に目を向けると喋りの能力に特化した人々が活躍している。一言で「喋り」と言っても色々な能力がある。コメンテーターや芸人のように喋りの中身で勝負している人たちもいれば、アナウンサーのように聞きやすい喋り方で仕事をこなしている人たちもいる。
 ぼくも教壇に立つことがあるので、喋りを生業にしている人間の端くれかもしれない。残念なことに喋りの能力はかなり低い。生まれ持った自然の声質はかなり悪く、とにかく声が通らない。レストランでは声を張り上げても店員さんに気がついてもらえないことが多い。声が悪いならせめても中身だけはマシなことを言おうとしているのだが、言いたいことが多くて早口になるか、適切な言葉が浮かばず壊れたレコードのように同じことを繰り返してしまいがちだ。
 素人からすれば、売れないタレントや芸人ですら平均を遥かに高く超えた喋りのスキルを持っている。特にアナウンサーの喋りは「下手だ」と揶揄される人でさえハイレベルだ。
 アナウンス力に関してはNHKのアナウンサーが一歩リードしている印象がある。顕著な違いを感じるのは、災害時の緊急放送のとき。刻一刻と更新されていく情報を理解して、平常時と変わらぬ声で正確に伝える能力には毎度感心してしまう。聞こうとしなくても、スラスラ言葉が耳に飛び込んでくる感じだ。
 だが、不思議なことが1つだけある。
 どういう訳か、ぼくはNHKアナウンサーのひとりの声をうまく聞き取れない。そのアナウンサーのスキルが低いということはないようだ。ネットでの酷評を見たことはない。それにニュースからバラエティ番組まで幅広くキャスティングされている。きっと評価の高い人なのだろう。
 でも、その人がニュースを読んでいると中身が全然頭に入ってこない。聞くぞと集中しない限り何を言っているか半分ぐらい分からない感じがする。喋りの能力の問題ではなくて、声質の問題なんだろうか?聞こえない声とでも呼びたい。