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血染めのデスク

by 唐草 [2023/03/21]



 気付いたら机の上が血だらけになっていた。血は、腕の動きに合わせてワイパーで伸ばしたかのように広がっていた。モニターしか見ずに作業していたので、自分が流血していることにまったく気付いていなかった。
 傷口から類推するに、じゃれてきたネコに腕を引掻かれて血が出たようだ。ネコに引掻かれることなんて日常茶飯事なので、ちょっとヒリヒリするぐらい気にもとめない。 
 机は白いので赤い血がよく映える。事情を知らなければ、ちょっとした事件現場のようだ。血塗られたまま放置するのは衛生面に問題があるだけではなく、何より見た目が悪い。
 完全犯罪を目指すのであれば化学薬品を駆使して血痕を拭き取らねばならない。幸いなことにぼくの机に過酸化水素水やルミノールをかけて血の気配を探そうとする人はいない。赤みが見えなくなればいいので、水拭だけで十分。
 雑巾が血染めになるのは嫌なので、濡らしたティッシュペーパーで拭くことにした。これなら後始末も簡単だ。
 力を込めてゴシゴシと拭いていく。
 すると驚くことに想像以上に机が白くなった。
 こんなに熱心に机を拭いたことはない。飲食厳禁を貫くPCデスクなので目に見える汚れがつくことはない。それでも毎日触れていれば少しずつ汚れていくし、ネコが歩けば人以上に汚れるだろう。
 もっと力を込めて拭けば紙のように白くなるかもしれない。そう思ってありったけの力を指先に込めて机を拭いた。
 すると拭いたところに消しゴムのカスのようなものがドンドン出てきた。これってひょっとして机の表面にこびりついていたぼくの皮脂が固まって、垢のように出ているのだろうか?恐る恐るティッシュを見ると真っ黒になっていた。
 垢が出るほど汚れていたなんて。と落ち込みかけたが、垢の正体は別のものだった。力を込めすぎてティッシュが細かくちぎれていただけだった。
 よかった、想像していたほどは汚れていなかったようだ。とは言え、拭いたところは色が明るくなったし、手触りもスベスベになった。垢が出るほどではないとは言え、かなり汚かったことは間違いない。