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左手で箸を

by 唐草 [2023/01/24]



 日本を訪れる外国人観光客が戻りつつあるというニュースを見て思ったことがある。彼らが食事で困っているなんて話は全然聞こえてこない。つまり、多くの外国人は平然と箸を使いこなしていると考えて間違いはないだろう。
 箸ネイティブな生活をしているアジアからの観光客であれば日本での食事に困ることなどない。しかし、日常的に箸を使う文化圏は限られている。多くの地域はスプーンやフォークに類するものを使っている。ニュースで取り上げられている欧米からの観光客であれば、スプーンとフォークを中心とした生活を送っているはず。
 この数年、世界で日本食が流行っている。なので、日本にやってこなくても箸を使う機会はあるだろう。とは言え、海外で日本食を提供するレストランなら日本食でもスプーンやフォークを提供するだろう。それは、日本にある本格インドカレー屋が手づかみだけを強要するのではなくスプーンを提供していれるのと同じ。そんな配慮に甘んじていたらいつまでも箸は使えないまま。箸を使える外国人は、高い志と情熱を胸に秘めて箸の使い方を習得しようと決心したはず。
 日本人だってちゃんと箸を使えるようになるまでには、幼い頃の数年を要する。幼い頃は思い通りに指を動かせないので箸捌きに苦戦する一方で、その世代の脳は柔軟にさまざまなことを吸収する。今のぼくが箸を使えるのも、そんな幼い脳のおかげだろう。
 外国人は大人になってから箸の使い方を身に着けることだろう。指を自由に動かせても、それはすでに習得した範囲に限られる。そして、脳は柔軟さを失いなかなか新しい動きを覚えてくれなくなっている。
 きっと、日本人の大人が利き手ではない手で箸を使えるようにするぐらいの訓練が必要になる。
 他国の料理を本場スタイルで食べてみたいという目標のために、彼らは一体どれだけの労力を費やしたのだろう?ぼくには左手で箸が使えるようにしてまで食べたいと思う料理はない。何が彼らを箸に駆り立てるのだろう?
 箸さばきを身につけることを苦労と思わないほどに、アジアの食は魅力的なのだろうか?