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底上げ

by 唐草 [2021/06/10]



 近所のスーパーでは、夏になるとハーフうどん&ハーフ天丼弁当という1つで二度美味しい弁当を売るようになる。季節感を感じる食材を使っているわけではないが、この弁当を見ると夏の到来を感じる。ちょっと前から店頭に並んでいたが、買ったのは今日が今季初だった。
 諸物価高騰の影響は、弁当の中身まで及んでいる。よく買う海苔弁に入っている竹輪の天ぷらは、上下半分にスライスされるようになってしまった。輪でなくなってしまったので竹輪感は乏しく、できそこのないの細い蒲鉾のようである。この取り組みを、販売価格維持のための涙ぐましい努力と評するのか、それともセコい実質値上げだと評するのかは意見の割れるところだろう。竹輪の天ぷら好きなぼくとしては、好意的に捉えることに抵抗がある。
 うどん天丼弁当の値段は去年と同じだった。だが、一年ぶりの購入であっても弁当を持った瞬間に異変に気がついた。弁当の重心が髙い感じがした。これはセブンイレブンの弁当を手にしたときと同じような感覚。想像より軽く、手になじまない不安定な感じだ。
 弁当を買い物かごに入れる前にちらりと底を見ると、想像通り立派な脚がついていた。天丼のご飯は容器の半分にも満たないのだろう。実質値上げの波は、夏の風物詩にまで及んでいた。竹輪の天ぷらと同じで、これも好意的に受け止めることは難しい。それでも、これが2021年の厳しい現実なのだと受け入れなくてはならない。小売業や飲食業界が立たされている苦境を思い浮かべ、ぼくは渋々ながら弁当を買って帰った。
 家で弁当を食べ終えようとした時に事件は起こった。うどんを食べ終わり、上げ底弁当箱に残っていたのは小さなかき揚げが載ったご飯だけ。それを箸で取ろうとした時、プラスチックの薄い弁当箱が倒れた。底上げし過ぎで、食材が偏るとバランスが保てなくなっていたようだった。
 テーブルの上に転がり落ちたかき揚げを見て思う。これだったら値上げしてでも量と器を維持してくれたほうが嬉しいと。