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実践!パン切り包丁

by 唐草 [2022/08/10]



 ついにパン切り包丁を使う機会がやってきた。パンをまっすぐに切れないのは道具のせいではなくてぼくが不器用だからという可能性を恐れて食パンから逃げていた1週間。それも今日で終わりだ。
 それにしてもパン切り包丁の刃は不思議な波形だ。切るだけなら均一に圧を掛けられる突起のないカーブがいいだろう。また、繊維を断つのであれば鋸刃のように小さく尖った刃を並べるのがいい。
 パン切り包丁の刃は、一般的な包丁とも鋸とも異なっている。意匠化された和紋の波か雲のように丸みのあるカーブが連続している。このカーブが、なんのためなのかを想像すらできない。
 いくら考えても波刃の理由は分からないが、パンに刃を入れてみればすぐに分かる。ビックリするほど滑らかにパンが切れた。その切り心地は、普通の包丁で切っていたときとはぜんぜん違う。
 今までは刃を通してパンの生地を感じていた。柔らかいけれど繊維質で、場所によって濃淡のあるものを切るという感覚だった。
 ところが、パン切り包丁でパンを切るとまるで粘土を切っているよう。パンの生地を感じること無く大きな塊を切り分けているという感じ。波刃がどう作用しているのかサッパリわからないが、この感触が波刃の効果なのは間違いないだろう。
 違っていたのは刃の感触だけではなかった。ほとんどパンくずが出なかったのも大きな違い。パンに挟まれた波刃は、いったいどのように小麦の繊維を断っているのだろう。見えないパンの断面ですごいことが起きているような気がする。
 小さな包丁を小刻みにパンを切るのは朝のストレスだった。パン切り包丁の導入でそのストレスともおさらば。優雅な手付きで滑らかにパンを切り分けられる。
 なお、食パンをまっすぐに切るのは相変わらず難しい。スムーズに手が動くようになったのでだいぶ改善したが、まだ切ったパンを横から見ると台形。溶けたバターが自然に滑り落ちるトーストからは脱却できていない。
 悪かったのは道具ではなく、ぼくの不器用さだった。でも、気持ち良い切り心地の前では、そんなことどうでもいい。ずっとパンを切っていたい。