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深海の力

by 唐草 [2022/10/03]



 昨日、握れば潰れるような蒸しパンのふわふわさについて書いているときに思い出したことがある。菓子パンとは関係のないふわふわ繋がりの連想だ。
 土曜日の夜に見たテレビ番組で目に見えない深海の圧力を理解してもらうために発泡スチロールの模型を加圧すると小さく縮むという実験結果を紹介していた。大きく精巧な模型が、まるでフリーズドライの食品のようにシワシワに小さくなっている絵面はこれまでに何度も見たことがある。
 それらを見るたびに思う。「イマイチ深海の凄さが伝わってこない」と。
 普段の生活でミニチュアサイズに圧縮されたカップ麺の容器を見ることはない。小さくしたのは、身近にはない尋常ならざる力なのだろうということは推測できる。でも、それが圧力なのか熱なのか、はたまた電磁波なのかは分からない。現にプラスチックを加熱すると縮む。だから、小さな発泡スチロール模型を目にしても尋常ならざる力の正体が圧力であると断定することはできない。
 それに実験材料は発泡スチロールだ。発泡スチロールといえば素手でバキバキ割れるぐらいに弱いし、強く握ったり一点を押せば簡単に凹む。壊さないように均等に力を加えれば簡単に圧縮できるのではないかと思えてしまう。
 そんなわけで、何度小さくなった発泡スチロール片を見ても深海の凄さをこれっぽっちも理解できない。むしろ、うまいことやれば自分でも発泡スチロールのミニチュア化ができるのではないかとさえ思えてしまう。
 圧力の凄まじさを理解させるのであれば、人の力では到底変形させられないもっと堅牢なものが破壊されたりひしゃげている様を見せてほしい。プロパンガスのボンベが潰れていたらもっとストレートに水圧の力を理解できるだろう。
 それなのに実験材料はいつまでも発泡スチロール。爆発する危険性もないし、なにより減圧しても潰れたままになるのが好都合なのだろう。それは分かるけれど、実験者の都合で選んだ実験なんて説得力に欠ける。もっとド派手な実験をしてよ。
 せめて深海から帰ってきた蒸しパンがクッキーになっているとかそんな実験を見たい。