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アキレスの敗北

by 唐草 [2021/07/20]



 5月頃から大量のファイルをG-Suite契約のGoogleドライブにアップしようと悪戦苦闘を続けてきた。開始当初は40万ファイルぐらいと想定していたのだが、蓋を開けてみれば70万ファイルを超えていた。しかも、毎日ドンドン新しいファイルが追加されていく。転送プログラムを改修して速度をドンドン上げながら膨大なファイルの山を切り崩そうと挑戦を続けていた。
 ぼくは、全力で前に進んでも全然追いつけないさまを「アキレスと亀」に喩えて書いてきた。ぼくがアキレスで、ファイルの塊が亀である。この亀は実に手強い存在だった。
 「アキレスと亀」の詭弁は微分の話である。追いつくまでの時間を無限に分割して考えるのでいつまでも追いつけないように見えるだけの話。高校生で習う微分ではなく、小学生が習う旅人算で差分を計算すれば数秒で追い越せるのは明白だ。
 だが、ぼくのチャレンジではそう簡単にことは運ばなかった。そもそもアキレス役のぼくのプログラムが遅い。それだけでも大きな痛手なのに、亀があまりにも速かった。当初からその速さ、つまり新規ファイルの追加速度には驚かされていた。ターボ亀とか呼んでいたが、速度は衰えるどころかドンドン加速していった。今ではジェット亀と呼びたくなるほどの速度に達している。
 ぼくも負けじとGoogleの制約を振り切る裏技の発見に挑み続けた。いくつかの光明を見出したが、それでも亀の加速にはついていけなかった。亀は軽々と100万ファイルを突破しており、その姿は音速の壁の向こうにいるようにすら見える。
 果てなき技術的チャレンジを続けてきたが、あっけない幕切れを迎えた。
 G-Suiteのドライブには容量上限が記載されておらず無限に使えるように見える。事実、マウントすると9.4EBと表示される。でも、それは表示上の問題で本当はもっと小さな上限が存在していた。
 35万ファイルを転送した時点で上限にぶつかってしまった。もう手も足も出ない。最大の壁は、技術ではなく契約だった。これではアキレスと亀の間に見えない壁があるようなものだ。