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550円

by 唐草 [2021/04/08]



 腑に落ちない買い物を見た。
 と言っても、詐欺を目の当たりにしたわけでもないし、ボッタクリでもなんでもない。情報のようなあやふやな買っていたわけでもないし、電子マネーやQR決済のような目に見えないやり取りだったわけでもない。手にできる品を現金で買っていたのを目撃しただけ。
 それは100円ショップでの出来事。ぼくの前にはベビーカーを押す若いお母さんが立っていた。会計は550円だった。レジ台には細々とした生活雑貨がいくつか並んでいるが、それが5個かは分からない。でも、会計額から察するに5点なのは間違いないだろう。
 550円の請求に対して、その女性は1,100円を支払っていた。千円札1枚と百円玉1枚だった。お釣りでもらう硬貨の枚数を減らす賢い買い物の仕方だ。ぼくも昔はできていたが、電子マネーを利用するようになって以来瞬時にお釣りの硬貨の枚数を計算できなくなった。ぼくだったら無造作に千円札1枚出して、450円を硬貨5枚で受け取っていたに違いない。硬貨がジャラジャラ出てきてその量を喜べるのは、スロットマシンぐらい。
 店員は、当然のように1,100円を受け取りレジマシンが示すとおり550円を返していた。きっと五百円玉と五十円玉を1枚づつだろう。こうして彼女の財布は重い小銭でパンパンに膨らむことはなかった。スマートな買い物だ。
 よくある買い物の1コマだろう。取るに足らない日常の1ページかもしれない。でも、ぼくには強烈な違和感が残った。
 550円の買い物をして同じ額の550円のおつりを受け取るというのが、なぜか腑に落ちなかった。もっと言えば、得体のしれない気持ち悪さを感じた。これが500円の請求に千円札を出して五百円玉を受け取っていたらここまで気持ち悪く感じなかったと思う。気持ち悪さの正体は50円にあるのだろうか?
 強烈な違和感だけが残ったが、自分でも何が気持ち悪いのかよくわかっていない。請求額の倍を払って、請求額と同じ額のおつりをもらう。この行為が、ぼくの中にある商売とか買い物の概念と食い違っているような気がする。