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ぶどうらしさ

by 唐草 [2023/09/29]



 シャインマスカットをいただいた。この数年、良いぶどうと言ったら誰もがシャインマスカットを思い浮かべるだろう。今やぶどうの代表と言うべき地位を築いている。誕生してまだ十数年の新品種だが、その躍進は目覚ましい。
 シャインマスカットの魅力は、やはり人の飽くなき食への欲望を具現化できたことにあるだろう。ぶどうは美味しい果物だけれども、1粒ずつ皮を剥くのは面倒だし、小さな種に気をつけて食べるのもストレスだった。そういった、小さなストレスをすべて取り払って、美味しいものを食べることだけに貪欲に集中できることが、他のぶどうと差別化を如実なものにした。
 これまでも海外品種には、皮ごと食べられる種無しぶどうはあった。だが、シャインマスカットほど甘いものはなかった。
 楽に食べられて、それでいて信じられないほど甘い。もう、これは人間を怠惰にする悪魔の食べ物と言って良い。
 欲望を満たす総合力が抜きん出たシャインマスカットが、高い評価を受けるのは当然のこと。でも、味だけを考えた際にシャインマスカットは、果たして一番のぶどうになれるだろうか?もし、皮を剥く必要があってもシャインマスカットを食べるだろうか?食べはするだろうが、ここまで珍重されなかっただろう。
 ここで逆説的に考えてみたい。シャインマスカットのような手軽で美味しいぶどうがあるのに、それでもなお皮を剥いて、果汁で手をベタベタにしてまで食べようと思うぶどうの方が美味しいぶどうと言えるのではないかと。
 また、味に関して言うとシャインマスカットは単調にも思える。甘いだけなのだ。それは砂糖を直接舐めているようなもので、奥深さにかける。味だけでぶどうだとは認識できないかもしれない。やはり、わずかな渋みがあってこそのぶどうだ。もはやシャインマスカットは、ぶどうではなくシャインマスカットという別の果物だと言っても良い。
 皮を剥いてでも食べたいと思う味、そしてぶどうらしい渋みを備えた品種こそ、もっとも美味しいぶどうらしいぶどうだと言えるのではないだろうか?
 その点を考慮すると、ぼくは種無しピオーネを推したい。