by 唐草 [2023/09/17]
ビタミンCが豊富だというアピールする際は、必ずと言っていいほどレモンが引き合いに出される。「レモン50個分のビタミンC」と言われるとすごそうに感じる(同時に酸っぱそうにも感じてしまう)。だが、ビタミンC 1,000mg配合と書かれても多いのか少ないのかよくわからない。実際はどちらも同じ量を示しているのに!
同じように東京ドームも単位のように使われている。巨大な施設の面積を表すのにも使われるし、大量に消費されるものの体積を表すのにも使われる。次元の異なる面積と体積を1つで示せる便利な球場である。さしずめ現代の巨大枡だ。
科学的には具体的な数字を示すことがなにより重要。しかし、ぼくら一般人にとっては「ビタミンCが多い」とか「この公園はかなり広い」という大まかな性質さえ理解できれば十分なことがほとんどだ。だから、「〇〇の✕✕倍」という比較は理解しやすい。だからこそ様々な場面で利用される。
上手いなと思ったのはフードロスの表現だ。日本では1年間に約2,750tの食品が廃棄されていて、その内の640tはまだ食べられるものだと言われている。こう書かれても数字が大きすぎてよくわからない。話題の分母である日本人が1.2億人もいるので、何百万トンになるのも当然だろうとさえ思えてしまう。
でも、これを「すべての日本人が1年におにぎりを2個食べずに捨てている」と書くとどれだけもったいないことをしているのか伝わるだろう。食品問題を食品で示したいい例だ。
一方、比較を使っても全然分からないものもある。
それが毒の強さだ。
こんな表現を見聞きしたことはないだろうか?
「〇〇クラゲの毒は、青酸カリの100倍の強さ」
ヤバいだろうということは伝わってくる。それも致死性のヤバさだと分かる。
でも、基準になっている青酸カリの毒性に対する一般人の認識なんて「飲んだら死ぬヤバいもの」程度。だから、上の説明はヤバいものの100倍強いんだからヤバいはずという頭の悪い理解しかもたらさない。
それでいいのか?
青酸カリは、毒界のレモン扱いで本当にいいのか?