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歯磨きのクセ

by 唐草 [2023/09/08]



 電動歯ブラシを使うようになって以来、歯科検診で歯石付着を指摘されることは減った。「ちゃんと磨けています」という言葉に年甲斐もなく喜んでいる。だが、その言葉は社交辞令でしかないようだ。歯のクリーニングを終えると歯の形が変わったような感覚を味わうことになるからだ。
 耳掃除と歯磨きは、自分の体の掃除だけれども直接見られない。鏡を使っても無理。だから、己の感覚に頼るしかない。それでも耳掃除の場合はかゆい場所があったり、耳垢が出てくるという結果を見ることができる。それに対して歯磨きは、なんのフィードバックもない。きちんと掃除できているのかを客観的に知るすべはない。
 だからこそ、歯を磨く時はしっかりと集中して歯ブラシの動きを立体的に捉えて、どの歯を、どんな向きで、どれだけ磨けているかを意識する必要がある。こう分かっていても、複雑な形状の歯を、ひとつの隙もなく磨くことは不可能に近い。歯並び的にどうしても磨きにくい場所がある。
 とはいえ、奥歯の裏側などの磨きにくさを感じる場所は、その磨きにくさ故に必然的に意識することになる。それは見通しの悪いカーブのほうが気をつけようと思うのと同じ。むしろ苦手意識がある歯のほうがちゃんと磨けているかもしれない。
 なので、もっとも磨き残しの多い歯は、磨きにくい歯では無いと考えている。おそらく、磨きやすく意識することのない歯にこそリスクが潜んでいるのだろう
 では、意識しない歯とはどれなのか?
 この問題の答を得るのは容易ではない。無意識になる場所や瞬間を見つけようと考えた途端に、それは無意識でなくなってしまうからだ。つまり、自分ひとりの力だけで磨き残しを見つけようとするのは、呼吸の回数や瞬きのペース、歩幅を測ろうとするのと同じ部類の難問だと言える。
 ならば磨けていない歯を見つけるのはやめだ。月曜日は前歯集中デーみたいなルールを作って、意識する場所を意図的に変える方が磨き残しは減るだろう。
 そう思って新たな歯磨きスタイルに挑戦したのだが、何曜日にどこを磨くのかを覚えきれず断念した。