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見逃した夏の影

by 唐草 [2022/08/30]



 残暑が厳しいとは言え、8月の盛りに比べれば暑さも落ち着いてきた。冷房を止めて窓を開けて過ごす時間も増えてきた。網戸越しに覗く雲にも夏雲のような力強さはない。暑さの中にも秋の気配が見え隠れしている。
 ボーッと空を眺めていたら網戸の向こうを黒い影が横切った。隣りにいた猫もその影を見逃さなかった。ぼく以上に真剣な眼差しで外を見ている。
 影の大きさ、動きと速さには見覚えがある。優雅に舞う蝶でもなければ、直線的に飛ぶ蝉でもない。しなやかで力強い動きは蜂だ。多摩に住む経験が、危険信号を発している。
 猫とともに窓を注視していたら影が戻ってきた。2cm程度の大きさと、妙に足の長いシルエット。たぶんアシナガバチだ。
 窓を開けるようになったこの数日、似た影を目の端に捉えていたような気がする。それどころか、夏前にも似た影を何度か見た気がする。
 これはマズいかもしれない。多摩暮らしの経験が、先ほど以上の危険を告げてくる。
 急いで家を飛び出すと、ぐるっと回って自室の窓が見える家の裏へと急いだ。そして、軒下を覗き込むとぼくの不安は的中していた。
 2階の屋根の裏の風雨が防げる場所に枯れたヒマワリのような蜂の巣がぶら下がっていた。おそらく20cm近くある。こんなに立派で絵に描いたような蜂の巣を目にするのは初めて。思わず顔を歪めて「やべぇ」とつぶやいていた。
 ハニカム構造がむき出しの巣なのでスズメバチではないようだ。高い位置にあるにも関わらず巣には白いものがたくさん埋まっているのが見える。十数匹の幼虫が育っているのだろう。
 今後の対策を練るためにネットでアシナガバチについて調べた。攻撃性は低いし、巣の再利用はないので直ちに危険がない限り放置でいいそうだ。家の裏側なので、網戸を開け放さない限り問題はないだろう。
 ただ、気になるのが巣のサイズ。ネットには10cm程度の小さな巣と書かれているが、その2倍近くあるように見える。実はアシナガバチではないという説が捨てきれないのが不安。
 あと、この夏アゲハチョウの幼虫が全滅したのは間違いなくこの巣のせい。アゲハよすまん。