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ロックイン

by 唐草 [2022/07/19]



 自室の扉に掛金を設置している。ここで言う掛金は、南京錠を設置するための蝶番型の金属部品のこと。穴の空いた可動式の金属板に扉に固定されたリングを通して、そのリングに南京錠を掛けてロックする。簡易的なロック機構なので住宅で見ることは滅多にないが、屋外にある資材置き場などで利用されていることが多い。
 なぜ、そんなものが自室に設置されているのか?
 家族すら入れない究極のひきこもりスペースを構築するため。そんな風に誤解されても仕方がないかもしれない。でも、掛金を設置したのには切実な理由がある。
 猫の侵入を防ぐためだ。
 ぼくの部屋は剥き出しのコンピュータが数台放置されているし、不安定な場所にモニタが置かれている。加えて大小様々な本棚も並んでいる。人間にしてみれば雑然としたオタク部屋でしかないのだけれども、猫には違って見えるようだ。猫には、オモチャが大量にあって隠れる場所も豊富なアスレチックに見えているらしい。だから、目を離した隙に大惨事が起きることもある。
 猫を自由に出入りさせるのは、ぼくが部屋にいるときだけ。ぼくが部屋を出るときは、猫を追い出す。ただ、猫は器用に引き戸を開けて勝手にぼくの部屋へと入っていく。だから、ロックが欠かせない。
 そこで掛金の出番となる。
 この掛金、ぼくが部屋から出たときにロックするためのものなので、部屋の外に設置されている。これ以外の設置方法はありえないけれど、ひとつだけ不安がある。
 地震で家が大きく揺れたときなんかに勝手に掛金が掛かってしまうリスクである。その時、不運にも自室にいたらぼくは閉じ込められてしまう。
 掛金はとても単純な機構とは言え、内側から外すのは至難の業。ただ金属板が噛んだだけなら内側から細い棒で押せばどうにか開けられるかもしれない。しかし、リングが回ってしまったら内側からの解錠は不可能。
 猫対策がぼくをロックインする日も遠くないかもしれない。そうなる前に対策を考えねばと思い続けてどれだけの年月が経ったことだろう。幸いまだ閉じ込められてはいないが…。