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忍耐に感謝

by 唐草 [2022/06/29]



 職場のビルにはエレベータが2基並んで設置されている。低層階の出入りが多いので、高性能な制御プログラムで連動する2機であっても待たされることは多い。ましてや、1機になってしまったら階段を使ったほうが早いことさえある。
 ぼくが帰ろうとした時、エレベータは定期メンテナンスで1機停止中だった。そこまで出入りの多い時間ではないので待つべきか?それとも無為に棒立ちしているよりは階段を使って降りた方が心身ともに健康になれるだろうか?
 9階から階段で降りるのはイヤだから待つという結論に至るのに時間はかからなかった。しかし、エレベータは待てども暮らせども来ない。各階止まりでゆっくり動いているし、さらに上のフロアでも呼んでいたのかぼくの前を素通りして上昇していった。
 ようやく乗れたのは、階段を選んでいたらゆうに1階までたどり着けていたほど時間が経ってからのことだった。
 エレベータに乗ると聞き慣れないメッセージが流れてきた。音声案内の充実したおしゃべりなエレベータなので機械音声が流れることには驚かなかった。しかし、その内容には驚きが隠せなかった。
 なんと自動音声は「長らくお待たせして申し訳ありませんでした」と侘びてきたのだ。今のエレベータにはこんな気遣いが搭載されているのかと感心してしまった。なんとも日本的な配慮だ。
 エレベータはバイリンガル仕様。どんなメッセージも日本語の後に英語が流れる。このお詫びもそうだった。たぶん”Sorry to keep you waiting so long.”と言った。
 ”Sorry”という侘びから始まる英語を聞いたときになんだかモヤモヤとした印象を受けた。
 ぼくの拙く少ない英語経験で判断するのは良くないかもしれないが、アメリカだったらここで非を認めて”Sorry”と謝らない気がする。おそらく”Thank you for your patience.”、直訳すれば「忍耐に感謝」と言うだろう。
 どちらも意味は一緒だが、英語のポジティブな無責任さっていいよね。