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011度目の正直

by 唐草 [2022/06/23]



 0と1で動くコンピューターは常に同じ結果を返す機械と思われている。理想的な状況下で完璧なプログラムを動作させれば、常に同じ結果を返してくれるだろう。
 でも、理想的な環境なんて想像上の産物でしか無いし、完璧なプログラムだって全知全能の神でもない限り書けやしない。現実では回路設計レベルで問題を抱えていることもあるし、単純に埃が積もって誤作動することもある。メモリを宇宙線が貫いて誤動作することも知られている。なにより人間の書いたプログラムが完璧だなんてことはありえない。
 だから、コンピュータは人間の想像を超えたさまざまな謎の動作を起こすのである。
 ここ数ヶ月、ぼくを悩ませている問題がある。それは規則正しく発生するがゆえにぼくを悩ませる。理解の範疇を超えた現象であり、妖怪の仕業だと言われたほうが納得できるほど。
 毎日午前10時頃と午後2時頃にメールが届く。内容はほぼ同じで、バックアップサーバの同期に失敗したという自動通知。
 致命的なエラーの通知なのにぼくは顔色ひとつ変えない。その同期がバックアップのバックアップのバックアップという補助的なものだということも心穏でいられる理由の1つ。でも、本当の理由は別にある。
 実は、午後2時のエラー後に実行される3度目の処理が必ず成功するのだ。想定より10時間ほどズレることになるが、目的のバックアップはちゃんと成功する。実務にはなんの問題もない。これが涼しい顔して警告をスルーできる理由。
 なぜ1度目と2度目は必ず失敗して、3度目のリトライは成功するのだろう?負荷の影響などを考慮して実行時間を変えたこともあったが、それでも結果は同じ。他の条件を変更しても、必ず2回失敗して3度目に成功する。
 失敗原因の予想はことごとく外れ、必ず2回失敗する理由はまるで見えてこない。だから、3度目に成功する理由の一端すら想像できない。
 理由はどうあれ3回やれば必ずうまくいく。さながらコンピュータの三度目の正直である。この経験則を信じて、今日も現場猫のノリでシステムを稼働させている。