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印刷危機

by 唐草 [2022/06/12]



 昨日、短いけれど重要なスピーチを依頼されていた。授業であれば、資料片手に100分喋り続けられるし、学生に対して講評という名の講釈を10分以上垂れることもできる。
 ところが、短い話は苦手。長い話は質より量なので、同じことを繰り返してもいいし、段取りが悪くても許される。なにより時間に余裕があるので、言葉に詰まっても問題ない。
 一方、スピーチのような短い話には質が求められる。簡潔な表現で順序よく話さなくてはならない。言い淀んでいたらあっという間に持ち時間がなくなってしまう。
 昨日のスピーチは持ち時間3分。ぼくが3分話すと、だいたい1,200字ぐらいになる。900字で書かれているここの記事よりちょっと長いぐらい。その程度の分量であれば暗記できる。
 でも、ステージに立って緊張していると言葉が出なくなってしまうこともある。万全を期してスピーチに臨むのであれば、原稿を用意するに越したことはない。とは言え、スマホ片手に登壇するわけにもいかないので、原稿を印刷することにした。
 印刷された原稿を見て絶句した。文字がかすれていて読めたものではなかったのだ。黒インクの残量がゼロになっていた。
 プリンターはピンチのときに必ず異常を来す。マーフィーの法則を体現した機器と言っていいだろう。
 だが、よく考えてみたら自宅のプリンターを使うのは2年ぶり。インクが固まったり、液漏れしていても不思議はない。
 さて、どうしたものか?
 ぼくは禁じ手を使うことにした。
 黒い文字を印刷するには黒インクを使うのが適切な方法だ。でも、もうひとつ方法がある。それがインクの三原色であるシアン、マゼンタ、イエローを混ぜて黒を作る方法。このやり方はインクの無駄なので、リッチブラックと揶揄されることさえある。だが、そんなことを気にしている場合ではない。今は、なにより刷ることが最優先だ。
 WordファイルをPDFに変換して、それをIllustratorに読み込み墨一色の黒をリッチブラックへ変換。それを印刷した。
 出てきたのは鮮やかな緑色の文章だった。マゼンタインクも切れていた。