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猫スナック

by 唐草 [2022/06/05]



 ペット産業は不景気知らずなんじゃないかと睨んでいる。
 今の物価高騰が食卓に与える影響は大きく、ぼくらの生活を直撃している。密かに内容量が減る実質値上げだけにとどまらず、原材料見直しによるコスト削減も行われている。企業は狡猾な工夫で利益を確保し、ぼくら消費者は知恵を絞って物価高に立ち向かっている。
 ところが、ホームセンターのペット用品売り場だけは世間の厳しい現実とは別世界にある。高機能を謳ったキラキラしたパッケージが所狭しと並んでいる。しかも、高価なものが売り場の大半を占めている。ペットコーナーだけは、まるでインスタに投稿された写真の中だけにある虚構の世界のように輝いて見える。
 ぼくが幼かった頃のペット用品売り場は、たいして可愛くもない猫の顔がプリントされた無骨な缶詰が並んでいるだけだった。それは間違っても人が食べたくなるようなものではなかった。ペット用オモチャだって革の端切れで作ったネズミぐらいしかなかった。
 それが今やどうだろう。ペットフードのパッケージはどれもお菓子のように楽しげ。人の食べ物の中に紛れていても気づかないだろうし、食べても猫用だとは思わないかもしれない。オモチャだって大小様々でカラフルなものが並んでいる。まるで縁日で怪しげなオモチャを売る出店のようだ。
 そんな風になったのは、多くの飼い主がペットに愛情とお金を際限なく注いでしまうせい。高い薬のほうが効きそうだと考えるのと同じように、高いペット用品のほうが良いに違いないと信じて疑わないからだ。
 愛情は盲目で実に愚か。そこに付け込んだペット業界は現代のメディチ家か。
 今日、ぼくが訪れたのはペット用品売り場でも一番輝いているエリア。それが「猫スナック」コーナー。つい最近までこんなコーナーは存在しなかった。「CIAOちゅ〜る」の成功がすべてを変えた。今や猫専用おやつは当たり前の存在。それどころか、ペット用品売り場の花形だ。眩しいほどキラキラしている。
 食欲不振の猫のために高級カリカリを買うのが目的。ぼくも愚かなひとりで、うちの猫どもは飼い主の人間より高価なおやつを食べている。