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赤い危機

by 唐草 [2022/02/24]



【グロ:流血:閲覧注意】
 昼食を作ろうと玉ねぎのみじん切りをしていたときのことだった。
 ぼくの頭には玉ねぎはなく、緊迫したウクライナ情勢から連想ゲームが始まっていた。地図上の位置と国旗の色は理解できた。青と黄色の組み合わせがきれいな国旗だな。でも、人の顔は浮かばない。身近にはウクライナ出身の人もいなければ、縁のある人もいない。TVでウクライナの方を見た記憶がある。金髪だったような気がする。そう言えば、美人が多い国だとネットで読んだぞ。金髪好きにはたまらないのだろうか?
 開戦の狼煙が今にも上がろうとしているというのに、危機を想像することなんて平和ボケのぼくにはできない。頭に浮かぶのは今の事態にはまるで関係のないことばかり。
 タイミング的には、ちょうど金髪に思いを馳せたときだろう。玉ねぎを抑えていた左手の親指の先に違和感があった。
 玉ねぎが指に刺さっているように見えた。
 玉ねぎって、指に刺さるもんだっけ?とかのんきなことを考えていたら一瞬で指先が真っ赤になった。
 指切ってんじゃん!
 止血よりも玉ねぎを優先するほど焦ってしまった。切ってない右手まで赤くなっていくのを見て慌てて、ティッシュを当てて止血を開始。ドンドン赤くなるティッシュを見たくないので、自分の指を握りつぶすぐらいの力で左手の親指を握りしめた。そして、血が収まるまで15分ぐらい腕を高く上げ続けていた。
 その間に見たものを脳内でゆっくり反芻する。
 どうも指先を薄くスライスしてしまったようだ。大半は指先の皮だけど、表面の肉もわずかに削いでいそう。
 「神経が集中する指先なので感じている痛みより実際の傷は浅いはずだ」とか「皮を切り落とさないで済んだのが不幸中の幸い。自分由来のもので傷に蓋ができている」と自分を励まそうとしても全然ダメ。考えれば考えるほど気分が悪くなっていく。
 血の勢いが収まったのを見計らってティッシュを取って絆創膏を貼った。それでも絆創膏は一瞬で赤くなった。絆創膏が動くと痛いので、今は薄手のゴム手袋をして患部の固定と保護をしている。
 場所が場所だけにタイピングが精一杯。さすがのぼくでもゲームは無理。