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自分のじゃないみたい

by 唐草 [2022/02/18]



 先日、市の無償歯科検診を受けた。初期虫歯には自覚症状がほとんどないので、虫歯に気づくのはいつも手遅れになってから。そうなれば痛いし、治療に時間もかかる。以前、歯科検診で無自覚の初期虫歯が見つかったときは、たった一度の治療で済んだ。それ以来、定期検診の重要さと大切さを噛み締めている。
 1年ぶりの検診は、歯も歯茎も健康で問題なしだった。このお墨付きがあれば、ちょっと歯が痛くても「虫歯かも?」と不安にならずに済む。
 せっかく歯医者に行ったのに検診だけで帰ってくるのはもったいない。歯のクリーニングも申し込んでいた。歯ブラシでは落としきれない歯石をドリルで根こそぎ取ってもらおうという魂胆だ。
 ぼくは下前歯の歯並びが悪い。歯の根本の隙間が大きいので気をつけていてもありとあらゆるものが詰まるのに、同じ歯の上には歯間ブラシを入れるのに難儀するほど隙間がない。掃除できずにゴミだけドンドン詰まるという最悪な歯並びだ。
 自分の歯並びを理解して手入れをしているが、気がつくと歯間が歯石で埋まっている。こうなってしまうと歯ブラシでも歯間ブラシでも手に負えず、プロに任せるより他にない。
 歯医者の椅子で無防備に口を開けて、容赦ないドリルの猛攻を受け入れた。終りがあるから耐えられるけれど、拷問みたいな行為だ。歯茎の周りにこびりついているしつこい歯石を砕いるのが電流のようにビリビリ伝わってくる。クリーニング後にうがいをしたら吐血したみたいになった。やっぱり拷問だったのだろうか?
 クリーニングから数日経ったが、違和感が拭えない。歯垢がすべて除去された歯が自分のものに思えないのだ。歯の隙間に舌が挟まったりと不慣れなことが起きているし、なにより歯と歯の間の隙間の広さに不安になる。空気や液体が歯の隙間を通るのが気持ち悪い。まるで歯に大きな風穴ができたようだ。
 歯にものが挟まった時の違和感は、自分の口の中のイメージと実際の感覚の差から生まれる。今のぼくは、歯が完全に綺麗になったがゆえに汚れていたころのイメージとの乖離に頭を抱えている。
 自分の歯なのに気持ち悪い。きれいなのに気持ち悪い。