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タイヤレンチ

by 唐草 [2022/02/06]



 窃盗や強盗の報道で「バールのようなもの」という表現を目にすることがある。人を殴るのにも、ガラスを叩き割るのにも、金庫をこじ開けるのにも「バールのようなもの」は大活躍。あたかも悪事を働くために作られた道具のようだ。
 バールだと断定しない歯切れの悪い表現だが、報道の正確さを突き詰めるこのような表現になるらしい。釘を引っ掛けるのに丁度よいブタのヒヅメのような突起のある金属棒は、素人目にはどれも同じに見える。だが仕事で使うプロにとっては、大きさや爪の形状によって「釘締め」「カジヤ」や「バール」といった区別があるそうだ。そんな違いを素人が理解できるはずもないので記者がバールと断言してしまうと誤った報道になってしまう。本当は「三徳釘締め」だったかもしれない。
 細かな点に配慮している報道姿勢は素晴らしいかもしれないが、そんな配慮も虚しく「バールのようなもの」は工具ではなく武器、それも悪者が使う武器だという認識が広まっているように思えてならない。
 日本ではバールが凶悪な工具という不名誉な地位を築いてしまったが、海外だとどんな工具がその地位にいるのだろう?
 ホラー映画へのステレオタイプだと「マチェット」や「チェーンソー」が悪そうなイメージがある。とは言え、その強烈な印象は特定のキャラクターによって植え付けられたもの。「バールのようなもの」のように誰もが使っているイメージはない。
 海外のサバイバル色が強くて銃をバンバン撃つゲームで遊んでいると、弾を消費しない近接武器として「タイヤレンチ」が登場することが多い。ぼくもタイヤレンチを使って、海底都市のサイキック使いや宇宙ステーションに蔓延る黒い地球外生命体、崩壊したアメリカで暗躍する共産主義者なんかをぶちのめしてきた。似たようなゲーム体験をしたことのある人も多いだろう。
 様々な作品に登場して、ゾンビから果ては宇宙人までぶちのめしているタイヤレンチ。工具なのに完全に武器ポジション。これってアメリカにおける「バールのようなもの」なのかな?