カレンダー

2020/03
    
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

触れるだけで崩れる

by 唐草 [2022/01/17]



 動物と暮らすのは、それがどんな動物であれ少なからずの困難が伴う。野生動物に限った話でない。牛や馬といった人間の暮らしを支えてきた家畜にも困難はあるだろうし、ペットとして時に人に寄り添う犬や猫だって人を困らせることがある。
 ある程度は躾でコントロールできる。それでも本能を牙抜きにはできない。ふとした瞬間に呼び起こされた本能が、悪意もないのに人を困らせる。
 猫と暮らしていて困るのはゲロと爪とぎ。食事をコントロールすることで換毛期以外のゲロは回避できる。でも、爪とぎを人の思い通りにするのは難しい。我が家は各部屋にダンボール製爪とぎを置いている。95%ぐらいは爪とぎを使ってくれるのだが、どうしてもそれ以外の場所でも爪とぎをしてしまう。
 もっとも深刻なダメージを受けているのは壁。ちょっと油断すると一瞬で壁紙を破壊されてしまう。
 もちろん対策をしている。定期的な爪切りがベストだと言われているが、我が家は違う。爪とぎを「できない」ようにするのではなく、「されても平気」なようにするのが我が家の流儀だ。
 方法は至ってシンプル。猫が爪とぎをする床から80cmの高さまで壁にプラダン(プラスチック製ダンボール板)を貼っている。要するに使い捨て追加装甲で壁を守っている。ポイントはダンボールの目を床と水平にして爪とぎしにくくすること。
 これで壁紙が深刻なダメージを受けることはなくなった。
 その代償が定期的なプラダンの張替え。少し手間だが、壁紙の値段を考えたらずっと安い。
 今日は、1年ぶりぐらいに張替えをしようとした。ところが、その計画は予想もしていなかった理由で頓挫した。
 準備してあった予備のプラダンを手に取ったら、半透明の薄いプラスチックは雲母の結晶が剥がれるようにバラバラになっていった。屋内に保存していたのに完全に風化していた。指で触れただけで崩れていくさまは、映画のワンシーンのようで儚くも美しかった。
 こうなったのは素材の不理解による保管ミス。プラダンは日光に当ててはいけないそうだ。210m x 90cmの大きな1枚を無駄にしてしまった。