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猫には臭いらしい

by 唐草 [2021/11/12]



 犬には劣るとは言え、猫の嗅覚だって人間とは比べ物にならないぐらい優秀だ。人間には嗅ぎ分けできない匂いの違いを識別するし、人間には感じることすらできない匂いも感知している。人間にとってはただクサいだけの匂いも野生を生き抜くすべをまだ忘れていない猫にとっては大切な匂いなのだろう。
 とは言え、匂いを一心不乱に嗅ぐ猫を見ていると複雑な気分になる。嗅いでいるのが、自分が脱いだばかりの靴下だったりするとなおさらだ。ダメ押しで本当に臭いときにするフレーメン反応と呼ばれる口を半開きにする顔をされるとちょっと立ち直さなくなる。と言うか、そんなにクサいんだったら真剣な顔をして嗅ぐなと声を大にして言いたい。
 猫の嗅覚の不思議を一番実感するのは、マタタビを与えたときだろう。人間には無臭にしか感じられないが、猫にとっては最高の媚薬とでもいう匂いらしい。嗅ぐだけでは満足できず、匂いの元をベロベロと舐め回す。最後には酔ったようにベロベロになり、地面をゴロゴロと転げ回る始末だ。フェロモンのようなものが含まれているのだと思うが、オスメス問わずに反応するのでそう単純な話ではないかもしれない。
 仕事から帰ってきたら猫がすり寄ってきた。普段はそんなことをしない連中なのに、すべての猫がぼくの元へとやってきた。急に猫にモテるようになったのだろうか?そうなら嬉しいが、ヤツらの反応に親愛の情は感じられない。貪欲にぼくのズボンの臀部を舐めようとする。つぶさに猫を見ているとマタタビを与えたときの動きにそっくりだった。
 どうやら、外出している間にどこかで猫をメロメロにする匂いがついてしまったようだ。それも尻の部分に。座った椅子になにかついていたのかもしれない。
 脱いだズボンを見てもシミのようなものはなにもない。念のために匂いを嗅いでみたが、埃っぽい匂いがしただけ。人間には何かが付いているようには感じられなかった。それでも猫にはたまらないらしい。脱いだズボンはヤツらの餌食になってしまった。